奈良一艘の珠玉の一句
城後朱美 選

三日月とまだ密会をくりかえす

人として正しく転倒した…のかだ

ニンゲンになるには嘘をつき過ぎた

きさらぎ彼句吾 選

人として正しく転倒した…のかだ

泣きなさい人恋いなさい枯れなさい

つきつめてゆけば水の音ポトリ

くんじろう 選

マーキングするのであれば白桃に

気に入らぬ窓だ爪切る音がする

寝たきりの窓からタナトスが覗く

宮井いずみ 選

白桃の果肉の産毛 卑怯だよ

アーアーアー当機これより羊雲

裂き烏賊の何にも恐いものは無い

峯島 妙 選

熱帯夜チチヲコロシテキタトコロ

せいしゅんの南南西に石野真子

カツ丼と蕎麦のカップルで無敵

榊 陽子 選

パンツ履く行為のカ.カ.カ.柿の種

老人とフランスパンは固いのだ

葉桜のざわつく指は捨てなさい

八上桐子 選

お祭りのののののあとの水の音

やわらかく尖る春の日の卵

また一羽逝ったよ海を眠らせて

守田啓子 選

いつの日かこうなる一人っきりの朝ぼらけ

そんな日のバリっと夕日裂ける音

ブタの鼻ポケモンの鼻トランプの鼻

宮井元伸 選

銃口は六時半へと向けてある

白桃の果肉の産毛 卑怯だよ

ひとときは鯖缶その後モアイ像

四ツ屋いずみ 選

後期高齢的ロケンロールな息を吐く

ニンゲンを解く銀河を敷きつめて

いつの日かこうなる一人っきりの朝ぼらけ

夏草ふぶき 選

潮騒をいくつ奏でてきたんだろ

つきつめてゆけば水の音ポトリ

なが〜い廊下の話だが 聞くか?

木口雅裕 選

わたくしのベサメムーチョな紙おむつ

JAZZ的なそこは一条戻り橋

じいさんにじいさんがいて僕もジイサン

広瀬ちえみ 選

目覚めたら日曜日が降っていた

ご注文は兎ですか耳ですか

たぶんそれはとても正しい濁り方

安藤なみ 選

手裏剣もSNSも飛び道具

ほほえみは当用漢字で書きなさい

そこからは選ばないという選び方

田中苑子 選

踊りたまえ今人生の最終章

一日一回の森になる時間

この胸を包むものなし冬木立

酒井かがり 選

ぶるーすのサビで内臓ぶちまける

キャバクラのおしぼりパチンと百物語

ぢいさんの渋からオーロラが漏れる

むさし 選

三角と四角が丸になれという

老いってさぁ夕陽へ跳んだ話だろ?

潮騒をいくつ奏でてきたんだろう

笹田かなえ 選

放置自転車の青サビの轍

靴底が「で」という顔で待たされる

アーアーアー当機これより羊雲

月波与生 選

じいさんにじいさんがいて僕もジイサン

金箔で包む貧しいものばかり

綿毛ふんわりこの子もきっと人を刺す

森 茂俊 選

海老フライの尻尾食べる派なら赦す

リカちゃんの小指はきっと蜜柑味

モスキート音させてピアスの穴が開く

戎 踊兵 選

さらさらと彷徨っているさらし首

病葉は流れる川を選べない

イカ墨が五体投地を悔いている

Sin 選

何色のわたしを君は裂きたいか

泣いてるか泣いていないか嗅いでみる

まねんだねそたらだどごでのたばれば

芝岡かんえもん 選

泣きなさい人恋いなさい枯れなさい

銭食うかプライド食うかパン喰うか

なが〜い廊下の話だが 聞くか?

高木まあこ 選

問題は忘れちまった悲しみに

力を込めるのは引き金を引く一瞬

ジュテームと鯉がわたしに言うのです

須藤しんのすけ 選

熱帯夜チチヲコロシテキタトコロ

泣きなさい人恋いなさい枯れなさい

老いってさぁ夕陽へ跳んだ話だろ?

岩根彰子 選

気に入らぬ窓だ爪切る音がする

オシボリシボッテモテヲツナイデモ海

オレンジを抱いたら瓶に戻ります

ひとり静 選

お祭りのののののあとの水の音

ゼンマイのもどる音だよ聴くがいい

天蕎麦をずるり 終末時計のそり

米山明日歌 選

泣きなさい人恋いなさい枯れなさい

潮騒はとても正しい死の匂い

なが〜い廊下の話だが 聞くか?

土田雅子 選

海老フライの尻尾食べる派なら赦す

禁止事項でやっと私を炊き上げる

なが〜い廊下の話だが聞くか?

熊谷冬鼓 選

いつの日かこうなる一人っきりの朝ぼらけ

一面に菜花痛くなったら君を呼ぶ

風呂敷でいる生き方もあるのだよ

藤田めぐみ 選

さよならのビードロ的な夢の後先

ゆかば煉獄 水ようかんがフワリ

ぢいさんの焼きそばバゴーン的なとこ

昌善 選

マーキングするのであれば白桃に

気に入らぬ窓だ爪切る音がする

目覚めたら日曜日が降っていた

猫田千恵子 選

なが〜い廊下の話だが 聞くか?

いつの日かこうなる一人っきりの朝ぼらけ

綿毛から綿毛へ戻ってゆく綿毛

柳本惠子 選

一日一回の森になる時間

だとしてもみんな寝言よ海鳴りよ

風呂敷になれる優しさだってある

河野潤々 選

わたくしは便所スリッパ…かも知れない

一日に一回は「ペ」になる時間

バチカンの大聖堂の生理痛

旅男 選

ツマノテヲダイテネタコトアリマスカ

サヨナラは言ったか夕日沈んだか

という訳で二病棟五号室

𠮷田州花 選

魂が振り向きざまにギャーティギャーティ

マヨネーズらしく生きればいいのです

不埒なデクノボーでした ごめん

まみどり 選

なが〜い廊下の話だが 聞くか?

老人はいいぞアナログがいいぞ

海へ還る日のカニカマの憂鬱

葉 閑女 選

ニンゲンを解く銀河を敷きつめて

楢山に蝉の抜け殻だけ一つ

潮騒をいくつ奏でてきたんだろう

村井規子 選

潮騒はとても正しい死の匂い

楢山に蝉の抜け殻だけ一つ

泣きなさい人恋なさい枯れなさい

瀧村小奈生 選

湖になるところに耳を置いておく

お祭りのののののあとの水の音

ぜんまいのやがてくしゃくしゃな黄昏

渡邊こあき 選

かさかさの掌 こわれてゆく時間

何色のわたしを君は裂きたいか

禁止事項でやっと私を炊き上げる

妹尾 凛 選

10月のすこし淫らな実がたわわ

ヒトヲサスレンシュウ カゴメカゴメ

月蝕が始まる 泌尿器科の裏で

青砥和子 選

スプリング ハズ カム 体臭を嗅ぐ

ルルルルと歩けぢいさんなんだから

月合掌のかたちで袋とじは開けよ

浪越靖政 選

プチプチを潰す桃井かおりゴッコして

アンニュイな老後の酔い方畳み方

したがって蝉になることは止めた

斎藤泰子 選

泣きなさい人恋いなさい枯れなさい

輪の中で溺れたらいい溺れてもいい

いいえただ老いてゆく気はないのです

にじの真美 選

一日に一回は「ペ」になる時間

核もつか銃か 食器を持ちなさい

ゼンマイのもどる音だよ聴くがいい

藤田智恵子 選

血糖値は正常「行くぞ!ロシナンテ」

コオロギでアナーキストで人間で

人間合格六十五歳になりました

佐渡真紀子 選

「政府軍発砲」生玉子に命中

泣いてるか泣いていないか嗅いでみる

潮騒をいくつ奏でてきたんだろう

金瀬達雄 選

パトリオットに色即是空と書いてある

リカちゃんが死んだ ボクだけ残った

イマジンがどんどん溜まる洗面器

永見心咲 選

泣きなさい人恋なさい枯れなさい

泣いてるか泣いていないか嗅いでみる

品性は保ったという曲り茄子

澤野優美子 選

月夜から淡谷のりこの窓が降る

目覚めたら日曜日が降っていた

ご注文は兎ですか耳ですか

真理猫子 選

ルルルルと歩けぢいさんなんだから

脳内にドンキホーテがまだ一人

わたくしのどこがヤンバルクイナ的