第29回杉野十佐一賞​
大 賞(10点)
大賞作品揮毫
芝岡かんえもん顔写真

(特)むさし(秀)政二(佳)れいこ・ちえみ

紙屑に一度はなってみるといい

芝岡かんえもん(神奈川県)


 おかじょうきの奈良一艘さんが亡くなり気落ちしていたところに、とっても嬉しいニュースが届きました。「大賞受賞、おめでとうございます!」あらーあらららー!瞳孔がドーンと開きました(笑)
 占い師に11月から名誉運が来ると言われ期待していたのですが、なんと杉野十佐一賞!最高の名誉運がやってきました。
 句について一言。この句のバックボーンは怒りです。人への怒り、己への怒りが言葉を紡ぎました。ひょっとしたら怒りは私にむいているのかも知れません。
 最後に…これからの作句活動に影響を与えると思う杉野十佐一賞に感謝です。


準 賞(9点)

(秀)政二・むさし(佳)れいこ・由紀子・裕見子

飛行機を何度折っても人になる  辻 述(東京都)


【9点】
(特)政二(佳)れいこ・由紀子・ちえみ・裕見子
いちにちはだいたい紙でできている滋賀県安井茂樹
【8点】
(秀)ちえみ・むさし(佳)れいこ・裕見子
追っかけて来ないよう折り鶴を置く青森県佐藤雅秀
(秀)政二(佳)れいこ・由紀子・ちえみ・裕見子・むさし
人影のように新聞飛んでゆく秋田県佐渡真紀子
【7点】
(秀)れいこ・ちえみ(佳)由紀子
(ゆうやけを)白紙にもどす遣唐使東京都暮田真名
(秀)由紀子(佳)政二・れいこ・ちえみ・裕見子
新聞紙一枚におさまってしまう滋賀県安井茂樹
(秀)むさし(佳)政二・れいこ・由紀子・裕見子
ずっとずっと折りたたまれたままの紙奈良県ひとり静
(秀)ちえみ・むさし(佳)裕見子
オーロラを給紙トレイに入れました大阪府まつりぺきん
(特)由紀子(佳)政二・裕見子
老人が持ち歩いている紙の束青森県小野五郎
【6点】
(秀)れいこ(佳)ちえみ・裕見子・むさし
たとう紙にしまう 静かにしてもらう秋田県斎藤泰子
(秀)由紀子(佳)政二・ちえみ・むさし
遺言書見ました 笑っちゃいました青森県髙瀨霜石
(秀)れいこ(佳)由紀子・ちえみ・裕見子
紙ねんど兵器もパンもひまわりも青森県熊谷冬鼓
(秀)れいこ(佳)政二・由紀子・裕見子
もういいかほなさいならと紙吹雪大阪府峯島 妙
(秀)由紀子(佳)政二・れいこ・むさし
ピアノにも家にもなった小さな紙大阪府浅井ゆず
(特)ちえみ(佳)れいこ
半券はもう伝説になるつもり大阪府小原由佳
(特)れいこ(佳)由紀子
あまりにも付箋とてつもなくテイッシュ大阪府雨森茂喜
【5点】
(秀)政二(佳)由紀子・ちえみ
カステラの紙でしたけど まだなにか?北海道宇佐美愼一
(秀)政二(佳)ちえみ・裕見子
まさかとは思うが紙の裏も見る秋田県佐々木智恵子
(佳)政二・由紀子・ちえみ・裕見子・むさし
お利口にしているつもり紙コップ大阪府髙杉 力
(佳)政二・れいこ・由紀子・ちえみ・むさし
姉は今紅いセロフアン紙の向こう青森県滋野さち
(佳)政二・れいこ・由紀子・ちえみ・裕見子
紙ですから少し信用されてます大阪府浅井ゆず
(特)裕見子
ペーパーレス? ペーもパー子も必要だ大阪府小林康浩
【4点】
(秀)裕見子(佳)ちえみ
紙燃やすように捨てたよ会津弁千葉県尾崎良仁
(秀)ちえみ(佳)由紀子
カステラの紙を今更はがせない秋田県佐々木智恵子
(秀)むさし(佳)ちえみ
くしゃくしゃの紙を伸ばして泣いている兵庫県中西南子
(秀)裕見子(佳)由紀子
バーキンに鯛焼き二個とラブレター大阪府峯島 妙
(秀)裕見子(佳)ちえみ
わかります付箋セラピーやってるね東京都藤田めぐみ
(秀)ちえみ(佳)由紀子
表紙になっても足のウラだとわかる愛媛県村山浩吉
(秀)由紀子(佳)むさし
トイレットペーパーくるくる生きて来たリズム岩手県熊谷岳朗
(秀)れいこ(佳)裕見子
終わりそうな君と短いレシートと滋賀県北村幸子
(秀)裕見子(佳)れいこ
紙コップ本名書いてあり ビビる青森県滋野さち
(佳)れいこ・由紀子・裕見子・むさし
画紙いっぱい泣き声だけが描いてある奈良県ひとり静
(佳)由紀子・ちえみ・裕見子・むさし
新聞紙しばる戦争縛るように青森県吉見恵子
【3点】
(秀)由紀子
新聞紙くしゅくしゅ穴を埋めつくす兵庫県筏井加代子
(秀)裕見子
紙ストロー萎える妖精吸ったまま東京都小沢 史
(佳)政二・れいこ・ちえみ
わかりましたと表紙はいつも青い空京都府山本知佳子
(佳)れいこ・由紀子・ちえみ
リトマス紙青になったら踊るわよ北海道四ツ屋いずみ
(佳)れいこ・由紀子・ちえみ
ぺらの街 ぺらの私の棲むところ京都府蟹口和枝
(佳)れいこ・ちえみ・裕見子
カレンダーに「ら」と書いてある母の未来滋賀県北村幸子
(佳)政二・れいこ・むさし
美しい紙になあれと水をやる秋田県赤石ゆう
(佳)由紀子・ちえみ・むさし
の途中では紙でしたということとか大阪府雨森茂喜
(佳)ちえみ・裕見子・むさし
俺が紙芝居だ山場だぜめくれ宮崎県雨月茄子春
(佳)由紀子・ちえみ・裕見子
コウゾ君ミツマタ君を囲む会大阪府小林康浩
(佳)政二・ちえみ・むさし
破けちゃった金魚すくいのようですよ青森県守田啓子
(佳)れいこ・由紀子・ちえみ
舌はもう原稿用紙モードです徳島県徳長 怜
(佳)れいこ・由紀子・むさし
白亜紀を見たくて恐竜折っている大阪府笠嶋恵美子
(佳)政二・れいこ・むさし
ポスターの鼻の画鋲の奥に雪東京都小沢 史
(佳)政二・れいこ・むさし
紙がいい燃えても風に吹かれても秋田県赤石ゆう
(佳)政二・れいこ・ちえみ
できるだけ大きな紙で包む嘘京都府西山竹里
(佳)政二・れいこ・由紀子
裏紙のチカラコブまだ温かい青森県にじの真美
(佳)れいこ・由紀子・裕見子
曇のち収入印紙または棘大阪府まつりぺきん
【2点】
(佳)政二・むさし
やさしさを紙で包んで重くする兵庫県妻木寿美代
(佳)ちえみ・裕見子
妖精が剥がす空室有りの紙愛知県青砥和子
(佳)由紀子・むさし
猫背の紙切れの渡った交差点福井県みつ木もも花
(佳)政二・むさし
幸せになるはずだった紙コップ愛知県安井紀代子
(佳)政二・由紀子
何ひとつ紙に逆うことはない青森県坂本清乃
(佳)政二・由紀子
あくまでも紙であろうとする紙幣兵庫県妻木寿美代
(佳)政二・ちえみ
紙だから説得力はありません。大阪府岸井ふさゑ
(佳)由紀子・裕見子
くしゃくしゃの浅草紙があったかい青森県笹田かなえ
(佳)政二・ちえみ
上手く描けたら夕陽はキミにあげる青森県須藤しんのすけ
(佳)裕見子・むさし
しゃっくりが続くシャッター街の張り紙京都府岩根彰子
(佳)政二・由紀子
紙の人形(ひとがた)にかおを描く つながる愛知県黒川利一
(佳)政二・むさし
ヒコーキに折られた手紙けさ届く大阪府宮井いずみ
(佳)ちえみ・むさし
ほしいのは今日の苦さを包む紙京都府山本知佳子
(佳)れいこ・ちえみ
エリーゼの夜なめらかな紙になる滋賀県重森恒雄
(佳)れいこ・由紀子
あらかたは雲のかけらかいろ紙か北海道澤野優美子
(佳)政二・むさし
ペーパーレス僕も一緒に消えました京都府和田洋子
(佳)政二・むさし
古紙しばる私もろとも捨ててくる青森県熊谷冬鼓
(佳)政二・むさし
「生きるって何」ゆっくりひらく紙つぶて静岡県米山明日歌
(佳)由紀子・ちえみ
許されていいのは紙の重さまで 東京都はるのあきこ
(佳)政二・ちえみ
応用編は得意技です段ボール青森県にじの真美
(佳)れいこ・むさし
爺ちゃんがばら撒く白紙委任状大阪府岸井ふさゑ
(佳)ちえみ・裕見子
副知事の顔から剥がすパラフィン紙北海道宇佐美愼一
(佳)ちえみ・裕見子
馬糞紙の話題で五分盛り上がり京都府河村啓子
(佳)れいこ・裕見子
びしゃびしゃにしてみる紙の約束兵庫県八上桐子
(佳)ちえみ・むさし
今晩のおかずは離婚届です石川県岡本 聡
(佳)裕見子・むさし
再生紙どうしで旅をしませんか大阪府笠嶋恵美子
(佳)由紀子・裕見子
ねむるのがいつからむずかしい白紙兵庫県八上桐子
(佳)ちえみ・むさし
月からの招待状は明日まで秋田県佐渡真紀子
(佳)れいこ・由紀子
つつみこむまもるつたえるふれる紙岐阜県早川柚香
(佳)由紀子・裕見子
新聞を一枚かけてイブとアダム秋田県田久保亜蘭
(佳)政二・ちえみ
【1点】
紙のないトイレに非常ボタン押す島根県石橋芳山
(佳)裕見子
紙っ切れやなんてぞんざいやなあ君兵庫県中西南子
(佳)むさし
画仙紙も筆も淫らになる真昼青森県葉 閑女
(佳)れいこ
ちり紙の話になると本気出す千葉県尾崎良仁
(佳)政二
おふくろのかな文字だけの手紙着く東京都あさじ
(佳)れいこ
熱帯夜に身もだえをする感熱紙京都府西山竹里
(佳)裕見子
紙切りの師匠ではなくぬらりひょん東京都飯島章友
(佳)むさし
レシートが1枚あの人はいない青森県まみどり
(佳)ちえみ
白紙撤回 スズメいっせいに飛び立つ神奈川県芝岡かんえもん
(佳)むさし
愛したり殺してみたり紙一重大阪府山里はるえ
(佳)裕見子
岸柳さんを紙風船で捕まえる青森県笹田隆志
(佳)むさし
障子から朝が素足で入り込む秋田県佐藤春子
(佳)政二
かさばらぬよう折って畳んだ一生を大阪府山里はるえ
(佳)むさし
紙魚の跡追って卑弥呼に会いに行く埼玉県山田こいし
(佳)むさし
紙おむつにナンパされちゃった 北海道浪越靖政
(佳)裕見子
進次郎ラシクなるまでティッシュオフ青森県きさらぎ彼句吾
(佳)むさし
純白の過去は語らぬ再生紙静岡県柳谷益弘
(佳)れいこ
ちり紙を揉ませてみればわかります北海道河野潤々
(佳)れいこ
横紙を破れば白い蛇、二匹宮崎県雨月茄子春
(佳)裕見子
紙風船鱒二の訳を諳んじる青森県髙瀨霜石
(佳)政二
判を押すのは風ですか紙ですか福井県みつ木もも花
(佳)裕見子
子が巣立つ母に型紙だけ置いて青森県葉 閑女
(佳)れいこ
二度折って開けばわるいようちえん三重県西脇祥貴
(佳)裕見子
フランシーヌになろうなろうとするティッシュ徳島県徳長 怜
(佳)むさし
お品書き残してあなただけ消えた東京都藤田めぐみ
(佳)れいこ
じゃんけんはぱあプロペラは一回休み鳥取県斉尾くにこ
(佳)裕見子
紙幣を吸う北島三郎の鼻岡山県藤井智史
(佳)政二
紙飛行機ふわりと降りる部屋あかり青森県工藤麦の芽
(佳)むさし
泣いてみせる紙ストローの溶けるまで兵庫県筏井加代子
(佳)裕見子
銀紙を口に入れては祖父になる千葉県岡本 朧
(佳)政二
勢いの一夜めくれし紙の朝青森県旅 男
(佳)ちえみ
十五夜に白紙委任をして眠る青森県渡邊こあき
(佳)由紀子
漉いて漉かれてペラッぺらの本物青森県田中 薫
(佳)裕見子
懐紙につつむ百歳の股関節北海道澤野優美子
(佳)由紀子
雁皮紙に水茎の跡は典麗埼玉県佐野 純
(佳)政二
紙いちまい燃えたりも飛んだりもする愛知県瀧村小奈生
(佳)れいこ
介護する みな柔らかな捨てる紙青森県戎踊兵
(佳)裕見子
紙魚だけは読み取ってくれたさ…たぶん青森県きさらぎ彼句吾
(佳)むさし
壁紙と深夜三時の物思い埼玉県野邊富優葉
(佳)れいこ
捺印の済んだ紙から鶴になる大阪府小原由佳
(佳)れいこ
和紙に筆 便箋にペン 月に雲青森県高木まあこ
(佳)裕見子
蘇る 紙より白き 頰の妻東京都越田清四郎
(佳)由紀子
画用紙をくってしまった駿河湾静岡県中前棋人
(佳)裕見子
雲間から夕陽が出たぞ紙を漉け青森県守田啓子
(佳)由紀子
泣き笑い今日も拍子木紙芝居三重県奥田悦生
(佳)むさし
トンネルの出口へ誘う紙おむつ埼玉県山田こいし
(佳)ちえみ
一線を越える紙ヒコーキのこころ青森県笹田かなえ
(佳)れいこ
付箋紙の赤が性格の不一致青森県井上健蔵
(佳)政二
紙屑を積み上げバーガー店を出る大阪府小川佳恵
(佳)ちえみ
立派な紙でした人生でした つづく青森県田中 薫
(佳)政二
僕トイレットペーパーになれません石川県岡本 聡
(佳)由紀子
のしに包まれ私のたどり着いた海秋田県佐藤春子
(佳)政二
紙吹雪そして選んだ樹木葬青森県まみどり
(佳)むさし
書き切れぬ思いが紙の上を這う石川県宮田喜美子
(佳)れいこ
1ドルは143.91円椿事はさて奈良県柳本惠子
(佳)政二
折り鶴に母の命を吹きこまん福岡県城後朱美
(佳)れいこ
秋のチェロ空色になるリトマス紙秋田県妹尾 凛
(佳)政二
さよならはお任せします再生紙愛媛県郷田みや
(佳)ちえみ
紙の本から銀河へ行って来たところ北海道四ツ屋いずみ
(佳)裕見子
紙が笑い私も今日は上機嫌岩手県熊谷岳朗
(佳)むさし
紙飛行機ですか果たし状ですか大阪府髙杉 力
(佳)由紀子
半額のアイスのチラシ@ヒロシマ京都府岩根彰子
(佳)政二
たとう紙開いて亡母に会いに行く宮崎県てつろう
(佳)むさし
紙風船耳をすませば母の吐息佐賀県桐野みづえ
(佳)れいこ
赤紙のゆるキャラが来て盆踊り東京都辻 述
(佳)由紀子
クラウドは綿菓子の味白ヤギさん熊本県いわさき楊子
(佳)政二
沖までは握り締めてる紙テープ京都府和田洋子
(佳)政二
とりあえず紙とエンピツ用意する秋田県田久保亜蘭
(佳)由紀子
戦いは紙風船の数競う高知県森乃鈴
(佳)政二
五線紙に蛙の子らを泳がせる青森県船橋敏昭
(佳)むさし
病む母へ筆談会話続けます福岡県城後朱美
(佳)れいこ
紙だった右手で拭っている涙神奈川県相原あやめ
(佳)ちえみ
巻き紙の阿弥陀籤を引かされる愛知県中川喜代子
(佳)由紀子
日本の頭を決める阿弥陀籤静岡県中前棋人

徳永政二 選(とくながせいじ・滋賀県・びわこ番傘川柳会所属)

佳作44もういいかほなさいならと紙吹雪大阪府峯島 妙
佳作43紙ですから少し信用されてます大阪府浅井ゆず
佳作42五線紙に蛙の子らを泳がせる青森県船橋敏昭
佳作41とりあえず紙とエンピツ用意する秋田県田久保亜蘭
佳作40沖までは握り締めてる紙テープ京都府和田洋子
佳作39たとう紙開いて亡母に会いに行く宮崎県てつろう
佳作38紙のないトイレに非常ボタン押す島根県石橋芳山
佳作37遺言書見ました 笑っちゃいました青森県髙瀨霜石
佳作36さよならはお任せします再生紙愛媛県郷田みや
佳作35折り鶴に母の命を吹きこまん福岡県城後朱美
佳作34紙吹雪そして選んだ樹木葬青森県まみどり
佳作33僕トイレットペーパーになれません石川県岡本 聡
佳作32ポスターの鼻の画鋲の奥に雪東京都小沢 史
佳作31紙屑を積み上げバーガー店を出る大阪府小川佳恵
佳作30紙だから説得力はありません。大阪府岸井ふさゑ
佳作29ピアノにも家にもなった小さな紙大阪府浅井ゆず
佳作28古紙しばる私もろとも捨ててくる青森県熊谷冬鼓
佳作27破けちゃった金魚すくいのようですよ青森県守田啓子
佳作26ペーパーレス僕も一緒に消えました京都府和田洋子
佳作25紙いちまい燃えたりも飛んだりもする愛知県瀧村小奈生
佳作24わかりましたと表紙はいつも青い空京都府山本知佳子
佳作23上手く描けたら夕陽はキミにあげる青森県須藤しんのすけ
佳作22勢いの一夜めくれし紙の朝青森県旅 男
佳作21紙飛行機ふわりと降りる部屋あかり青森県工藤麦の芽
佳作20姉は今紅いセロフアン紙の向こう青森県滋野さち
佳作19応用編は得意技です段ボール青森県にじの真美
佳作18裏紙のチカラコブまだ温かい青森県にじの真美
佳作17判を押すのは風ですか紙ですか福井県みつ木もも花
佳作16あくまでも紙であろうとする紙幣兵庫県妻木寿美代
佳作15できるだけ大きな紙で包む嘘京都府西山竹里
佳作14美しい紙になあれと水をやる秋田県赤石ゆう
佳作13「生きるって何」ゆっくりひらく紙つぶて静岡県米山明日歌
佳作12何ひとつ紙に逆うことはない青森県坂本清乃
佳作11紙がいい燃えても風に吹かれても秋田県赤石ゆう
佳作10かさばらぬよう折って畳んだ一生を大阪府山里はるえ
佳作09新聞紙一枚におさまってしまう滋賀県安井茂樹
佳作08ずっとずっと折りたたまれたままの紙奈良県ひとり静
佳作07幸せになるはずだった紙コップ愛知県安井紀代子
佳作06ヒコーキに折られた手紙けさ届く大阪府宮井いずみ
佳作05おふくろのかな文字だけの手紙着く東京都あさじ
佳作04やさしさを紙で包んで重くする兵庫県妻木寿美代
佳作03老人が持ち歩いている紙の束青森県小野五郎
佳作02紙の人形(ひとがた)にかおを描く つながる愛知県黒川利一
佳作01お利口にしているつもり紙コップ大阪府髙杉 力
 
秀逸5まさかとは思うが紙の裏も見る秋田県佐々木智恵子
秀逸4カステラの紙でしたけど まだなにか?北海道宇佐美愼一
秀逸3飛行機を何度折っても人になる東京都辻 述
秀逸2紙屑に一度はなってみるといい神奈川県芝岡かんえもん
秀逸1人影のように新聞飛んでゆく秋田県佐渡真紀子
 
特選いちにちはだいたい紙でできている滋賀県安井茂樹
 
選 評

 今回の課題は「紙」。この題はほかのところで一度経験しているが、その時は「折り紙」の句が中心だった。
 しかし、十佐一賞は違っていた。新しい魅力のある句がたくさん集まった。
 毎年、題によって集まる句が違ってくるので、考える方も大変である。

  【秀逸】 まさかとは思うが紙の裏も見る

 これが人間の心理かもしれない。いい知らせもそうでない知らせも、つい裏を確かめてしまう。そして、何もなかったことに安心する。

  【秀逸】 カステラの紙でしたけど まだなにか?

 「まだなにか?」がおもしろい。
 ゆっくりはがすカステラの底にひっついている紙には何か特別なものがある。その実感にうなずく。

  【秀逸】 飛行機を何度折っても人になる

 「人になる」に納得。
 誰かに向かって飛んでいるような一枚の紙が飛行機になって呼吸をしている。

  【秀逸】 紙屑に一度はなってみるといい

 実感が伝わるような書き方が魅力だが、しかし、なってみなければわからない。紙屑に聞いても答えてはくれない。

  【秀逸】 人影のように新聞飛んでゆく

 「人影」がいい。
 新聞紙が風に舞っている景色は何度か目にしている。
 人間のことがいっぱい書かれた新聞。

  【特選】 いちにちはだいたい紙でできている

 簡単なようだが難しい「紙」からの着想である。
 確かに過ぎてしまえばただの紙切れのような一日。
 シンプルな書き方がいい。

なかはられいこ 選(なかはられいこ/岐阜県・「ねじまき句会」代表)

佳作44できるだけ大きな紙で包む嘘京都府西山竹里
佳作43裏紙のチカラコブまだ温かい青森県にじの真美
佳作42紙だった右手で拭っている涙神奈川県相原あやめ
佳作41曇のち収入印紙または棘大阪府まつりぺきん
佳作40舌はもう原稿用紙モードです徳島県徳長 怜
佳作39赤紙のゆるキャラが来て盆踊り東京都辻 述
佳作38紙ですから少し信用されてます大阪府浅井ゆず
佳作37つつみこむまもるつたえるふれる紙岐阜県早川柚香
佳作36人影のように新聞飛んでゆく秋田県佐渡真紀子
佳作35秋のチェロ空色になるリトマス紙秋田県妹尾 凛
佳作341ドルは143.91円椿事はさて奈良県柳本惠子
佳作33紙がいい燃えても風に吹かれても秋田県赤石ゆう
佳作32美しい紙になあれと水をやる秋田県赤石ゆう
佳作31画紙いっぱい泣き声だけが描いてある奈良県ひとり静
佳作30付箋紙の赤が性格の不一致青森県井上健蔵
佳作29紙屑に一度はなってみるといい神奈川県芝岡かんえもん
佳作28いちにちはだいたい紙でできている滋賀県安井茂樹
佳作27和紙に筆 便箋にペン 月に雲青森県高木まあこ
佳作26捺印の済んだ紙から鶴になる大阪府小原由佳
佳作25介護する みな柔らかな捨てる紙青森県戎踊兵
佳作24エリーゼの夜なめらかな紙になる滋賀県重森恒雄
佳作23白亜紀を見たくて恐竜折っている大阪府笠嶋恵美子
佳作22紙コップ本名書いてあり ビビる青森県滋野さち
佳作21びしゃびしゃにしてみる紙の約束兵庫県八上桐子
佳作20新聞紙一枚におさまってしまう滋賀県安井茂樹
佳作19じゃんけんはぱあプロペラは一回休み鳥取県斉尾くにこ
佳作18二度折って開けばわるいようちえん三重県西脇祥貴
佳作17ぺらの街 ぺらの私の棲むところ京都府蟹口和枝
佳作16横紙を破れば白い蛇、二匹宮崎県雨月茄子春
佳作15ちり紙を揉ませてみればわかります北海道河野潤々
佳作14ピアノにも家にもなった小さな紙大阪府浅井ゆず
佳作13あらかたは雲のかけらかいろ紙か北海道澤野優美子
佳作12飛行機を何度折っても人になる東京都辻 述
佳作11爺ちゃんがばら撒く白紙委任状大阪府岸井ふさゑ
佳作10リトマス紙青になったら踊るわよ北海道四ツ屋いずみ
佳作09姉は今紅いセロフアン紙の向こう青森県滋野さち
佳作08ずっとずっと折りたたまれたままの紙奈良県ひとり静
佳作07ポスターの鼻の画鋲の奥に雪東京都小沢 史
佳作06追っかけて来ないよう折り鶴を置く青森県佐藤雅秀
佳作05熱帯夜に身もだえをする感熱紙京都府西山竹里
佳作04ちり紙の話になると本気出す千葉県尾崎良仁
佳作03わかりましたと表紙はいつも青い空京都府山本知佳子
佳作02半券はもう伝説になるつもり大阪府小原由佳
佳作01カレンダーに「ら」と書いてある母の未来滋賀県北村幸子
 
秀逸5もういいかほなさいならと紙吹雪大阪府峯島 妙
秀逸4終わりそうな君と短いレシートと滋賀県北村幸子
秀逸3紙ねんど兵器もパンもひまわりも青森県熊谷冬鼓
秀逸2(ゆうやけを)白紙にもどす遣唐使東京都暮田真名
秀逸1たとう紙にしまう 静かにしてもらう秋田県斎藤泰子
 
特選あまりにも付箋とてつもなくテイッシュ大阪府雨森茂喜
 
選 評
  【特選】 あまりにも付箋とてつもなくテイッシュ

 特選に選んだ句は初見から頭にこびりついて、今でもこびりついたままだ。そのせいで付箋を貼るときも、ティッシュを使うときも、あまりにも、とか、とてつもなく、とか、どこからか声が聞こえるのだ。なにしてくれるねん。ともあれ、私のなかでの付箋とテッシュの概念は変わった。私はナンセンスな川柳なんて無いと、かたくなに思ってる。掲句は一見そう見えるけど、ここには「あまりにも」と「付箋」の関係「とてつもなく」と「ティッシュ」の関係が書かれているのだ。万が一、私が知らないだけで「あまりにも○○とてつもなく○○」という構文があるとして、そこに付箋とテッシュを思いついたことが、単純にすごいと思う。
 秀逸5句については、思いっきり川柳の幅の広さを活用させていただいた。

  秀逸① たとう紙にしまう 静かにしてもらう

 この句にある仄暗い怖さは、何をしまうのか、が書かれていないところにある。「静かにして」が何を意味するのかも含めて、怖い。

  秀逸②  (ゆうやけを)白紙にもどす遣唐使

 誰もが暗記したことのある懐かしいフレーズだ。そんな年号の語呂合わせを下敷きにした機知に溢れた一句。カッコで括られた、ゆうやけが機知を詩に引き寄せていて、そこにいちばん惹かれた。

  秀逸③ 紙ねんど兵器もパンもひまわりも

 紙ねんどで作られた「パン」と「ひまわり」に「兵器」が混じる。絵本テイストのイメージにノイズが混じる。やわらかな書き方なだけに、いま、そこにある危機が伝わってくる。

  秀逸④ 終わりそうな君と短いレシートと

 現代社会を生きているリアルが書かれていた切ない。「終わりそうな」の終わりは、書かれていない「わたし」との関係なのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。「短いレシート」がリアルさの主柱。

  秀逸⑤ もういいかほなさいならと紙吹雪

 ものすごいめんどくさがってて、おかしい。大阪弁でしか表現できない軽さもあって紙吹雪が妙に効いている。

樋口由紀子 選(ひぐちゆきこ/兵庫県・「晴」編集発行人)

佳作44日本の頭を決める阿弥陀籤静岡県中前棋人
佳作43紙ねんど兵器もパンもひまわりも青森県熊谷冬鼓
佳作42戦いは紙風船の数競う高知県森乃鈴
佳作41新聞を一枚かけてイブとアダム秋田県田久保亜蘭
佳作40クラウドは綿菓子の味白ヤギさん熊本県いわさき楊子
佳作39半額のアイスのチラシ@ヒロシマ京都府岩根彰子
佳作38紙の人形(ひとがた)にかおを描く つながる愛知県黒川利一
佳作37表紙になっても足のウラだとわかる愛媛県村山浩吉
佳作36曇のち収入印紙または棘大阪府まつりぺきん
佳作35裏紙のチカラコブまだ温かい青森県にじの真美
佳作34のしに包まれ私のたどり着いた海秋田県佐藤春子
佳作33新聞紙しばる戦争縛るように青森県吉見恵子
佳作32くしゃくしゃの浅草紙があったかい青森県笹田かなえ
佳作31つつみこむまもるつたえるふれる紙岐阜県早川柚香
佳作30あらかたは雲のかけらかいろ紙か北海道澤野優美子
佳作29泣き笑い今日も拍子木紙芝居三重県奥田悦生
佳作28画用紙をくってしまった駿河湾静岡県中前棋人
佳作27お利口にしているつもり紙コップ大阪府髙杉 力
佳作26許されていいのは紙の重さまで 東京都はるのあきこ
佳作25雁皮紙に水茎の跡は典麗埼玉県佐野 純
佳作24漉いて漉かれてペラッぺらの本物青森県田中 薫
佳作23もういいかほなさいならと紙吹雪大阪府峯島 妙
佳作22ねむるのがいつからむずかしい白紙兵庫県八上桐子
佳作21カステラの紙を今更はがせない秋田県佐々木智恵子
佳作20姉は今紅いセロフアン紙の向こう青森県滋野さち
佳作19紙ですから少し信用されてます大阪府浅井ゆず
佳作18舌はもう原稿用紙モードです徳島県徳長 怜
佳作17白亜紀を見たくて恐竜折っている大阪府笠嶋恵美子
佳作16バーキンに鯛焼き二個とラブレター大阪府峯島 妙
佳作15の途中では紙でしたということとか大阪府雨森茂喜
佳作14何ひとつ紙に逆うことはない青森県坂本清乃
佳作13あくまでも紙であろうとする紙幣兵庫県妻木寿美代
佳作12ずっとずっと折りたたまれたままの紙奈良県ひとり静
佳作11ぺらの街 ぺらの私の棲むところ京都府蟹口和枝
佳作10リトマス紙青になったら踊るわよ北海道四ツ屋いずみ
佳作09画紙いっぱい泣き声だけが描いてある奈良県ひとり静
佳作08猫背の紙切れの渡った交差点福井県みつ木もも花
佳作07(ゆうやけを)白紙にもどす遣唐使東京都暮田真名
佳作06コウゾ君ミツマタ君を囲む会大阪府小林康浩
佳作05カステラの紙でしたけど まだなにか?北海道宇佐美愼一
佳作04いちにちはだいたい紙でできている滋賀県安井茂樹
佳作03あまりにも付箋とてつもなくテイッシュ大阪府雨森茂喜
佳作02飛行機を何度折っても人になる東京都辻 述
佳作01人影のように新聞飛んでゆく秋田県佐渡真紀子
 
秀逸5ピアノにも家にもなった小さな紙大阪府浅井ゆず
秀逸4トイレットペーパーくるくる生きて来たリズム岩手県熊谷岳朗
秀逸3新聞紙くしゅくしゅ穴を埋めつくす兵庫県筏井加代子
秀逸2遺言書見ました 笑っちゃいました青森県髙瀨霜石
秀逸1新聞紙一枚におさまってしまう滋賀県安井茂樹
 
特選老人が持ち歩いている紙の束青森県小野五郎
選 評

  【特選】老人が持ち歩いている紙の束

 昨年の杉野十佐一賞大賞の句と仕立て方が似ているので、最後まで迷ったがやはり落とせなかった。「老人」と「紙の束」にリアリティがありすぎて、圧倒された。「老人」を見事に描写している。誰もが等しく「老人」になる。「紙の束」はなにか。ただの無駄な紙かもしれない。札束かもしれない。二つの名詞をつないでいる「持ち歩いている」もぴったりとはまっている。
 豊かな消費社会への警告だろうか。消費社会であるがゆえの喪失感が際立っている。この姿は過去の、現在の、未来の、私たち自身である。この句の底には根源的寂しさがある。その姿を想像するだけで切なく、哀しくなる。言葉の一つ一つの意味をきちんと立ち上げながら、映像的な虚構性をまとわせて、川柳に仕上げている。

  新聞紙一枚におさまってしまう

 何を、どのようにすれば、なぜそうなるのか。具立的には何も書かれていない。新聞紙一枚に書かれていることは、人生全般もそのような気がしないでもない。しかし、それを嘆いているのでもなさそうである。そんなものだと思っているのだ、きっと。

  遺言書見ました笑っちゃいました

 そんな遺言書を作ってみたいものだとまず思った。「遺言書」というわりと重たいものが、「笑っちゃいました」とどんでん返しする。「ほなさいなら」と書いたほんわかするイラスト入りだったのかもしれない。

  新聞紙くしゅくしゅ穴を埋めつくす
  トイレットペーパーくるくる生きて来たリズム
  ピアノにも家にもなった小さな紙


 誰もが思い当たる経験を見つけて、説明や報告の穴に落とさないように、コトをスムーズに手際よく運んでいる。

広瀬ちえみ 選(ひろせちえみ/宮城県/「What's」編集発行人)

佳作44巻き紙の阿弥陀籤を引かされる愛知県中川喜代子
佳作43馬糞紙の話題で五分盛り上がり京都府河村啓子
佳作42コウゾ君ミツマタ君を囲む会大阪府小林康浩
佳作41紙のないトイレに非常ボタン押す島根県石橋芳山
佳作40紙ですから少し信用されてます大阪府浅井ゆず
佳作39今晩のおかずは離婚届です石川県岡本 聡
佳作38カレンダーに「ら」と書いてある母の未来滋賀県北村幸子
佳作37紙の本から銀河へ行って来たところ北海道四ツ屋いずみ
佳作36新聞紙しばる戦争縛るように青森県吉見恵子
佳作35の途中では紙でしたということとか大阪府雨森茂喜
佳作34紙屑に一度はなってみるといい神奈川県芝岡かんえもん
佳作33できるだけ大きな紙で包む嘘京都府西山竹里
佳作32立派な紙でした人生でした つづく青森県田中 薫
佳作31わかります付箋セラピーやってるね東京都藤田めぐみ
佳作30一線を越える紙ヒコーキのこころ青森県笹田かなえ
佳作29遺言書見ました 笑っちゃいました青森県髙瀨霜石
佳作28ほしいのは今日の苦さを包む紙京都府山本知佳子
佳作27応用編は得意技です段ボール青森県にじの真美
佳作26月からの招待状は明日まで秋田県佐渡真紀子
佳作25たとう紙にしまう 静かにしてもらう秋田県斎藤泰子
佳作24十五夜に白紙委任をして眠る青森県渡邊こあき
佳作23人影のように新聞飛んでゆく秋田県佐渡真紀子
佳作22カステラの紙でしたけど まだなにか?北海道宇佐美愼一
佳作21副知事の顔から剥がすパラフィン紙北海道宇佐美愼一
佳作20許されていいのは紙の重さまで 東京都はるのあきこ
佳作19エリーゼの夜なめらかな紙になる滋賀県重森恒雄
佳作18リトマス紙青になったら踊るわよ北海道四ツ屋いずみ
佳作17新聞紙一枚におさまってしまう滋賀県安井茂樹
佳作16ぺらの街 ぺらの私の棲むところ京都府蟹口和枝
佳作15上手く描けたら夕陽はキミにあげる青森県須藤しんのすけ
佳作14姉は今紅いセロフアン紙の向こう青森県滋野さち
佳作13俺が紙芝居だ山場だぜめくれ宮崎県雨月茄子春
佳作12紙燃やすように捨てたよ会津弁千葉県尾崎良仁
佳作11舌はもう原稿用紙モードです徳島県徳長 怜
佳作10破けちゃった金魚すくいのようですよ青森県守田啓子
佳作09くしゃくしゃの紙を伸ばして泣いている兵庫県中西南子
佳作08白紙撤回 スズメいっせいに飛び立つ神奈川県芝岡かんえもん
佳作07わかりましたと表紙はいつも青い空京都府山本知佳子
佳作06いちにちはだいたい紙でできている滋賀県安井茂樹
佳作05妖精が剥がす空室有りの紙愛知県青砥和子
佳作04紙だから説得力はありません。大阪府岸井ふさゑ
佳作03紙ねんど兵器もパンもひまわりも青森県熊谷冬鼓
佳作02お利口にしているつもり紙コップ大阪府髙杉 力
佳作01まさかとは思うが紙の裏も見る秋田県佐々木智恵子
 
秀逸5オーロラを給紙トレイに入れました大阪府まつりぺきん
秀逸4追っかけて来ないよう折り鶴を置く青森県佐藤雅秀
秀逸3表紙になっても足のウラだとわかる愛媛県村山浩吉
秀逸2(ゆうやけを)白紙にもどす遣唐使東京都暮田真名
秀逸1カステラの紙を今更はがせない秋田県佐々木智恵子
 
特選半券はもう伝説になるつもり大阪府小原由佳
選 評

 秀1と特選の作品でどちらを特選にするか最後まで迷った。選をしていて先に心に引っかかったのは秀1の作品だった。
 カステラではないけどカステラの包装紙に包まれ何処かへ誰かへ差し出される。中味は何だったのだろう。饅頭? 賄賂? 開けたときのその人の表情は? ニンマリとするのか、あるいは笑い転げるのか。この作品にはこの世への哀しみ、怒り、笑い、がすべて含まれている。こんな場面はあちこちで繰り広げられ、「私ってナニ?」と思うことがしばしばである。
 特選の半券は映画、演劇、美術館、遊園地等さまざまだ。昔映画のパンフレットを集めていたことがある。本棚一段になり捨ててしまったが、その後ひどく後悔している。半券をスクラップブックに収集している人もいるかもしれない。楽しかった時間が確かにあったという人生の歴史でもある。しかし、昨今、もうチケットは必要ではない。すべてスマホの中である。コンサートも美術館もスマホで申込み、差し出せば簡単に入場できる。美しく印刷された、あるいは特徴的な文字で書かれた半券は残らない。
 この作品は半券が意思を持った主語として語られている。舞台から去る日が来ているが、半券は「つもり」と言う言葉から嘆いているのではなく、誇りをもって勇退するつもりだ。
 半券のスクラップブックは確かに伝説になるだろう。その人だけの伝説物語ではあるが。
 (ゆうやけ)を白紙にもどす遣唐使 もとても気になった作品だった。( )の中に入るのはゆうやけの他にどんなものがあるだろうと考えたが、遣唐使とゆうやけがぴったりだと思った。新たな一日に望みを託し遣唐使として異国の人々との対話を交わそうとしている。ある意味私たちは遣唐使なのかもしれない。

 「紙」の作品群を読み、今回は選が割れるのではないだろうかと思った。

峯裕見子 選(みね ゆみこ/滋賀県/第28回杉野十佐一賞受賞)

佳作44ねむるのがいつからむずかしい白紙兵庫県八上桐子
佳作43老人が持ち歩いている紙の束青森県小野五郎
佳作42再生紙どうしで旅をしませんか大阪府笠嶋恵美子
佳作41紙ですから少し信用されてます大阪府浅井ゆず
佳作40新聞紙一枚におさまってしまう滋賀県安井茂樹
佳作39終わりそうな君と短いレシートと滋賀県北村幸子
佳作38紙が笑い私も今日は上機嫌岩手県熊谷岳朗
佳作37いちにちはだいたい紙でできている滋賀県安井茂樹
佳作36新聞を一枚かけてイブとアダム秋田県田久保亜蘭
佳作35曇のち収入印紙または棘大阪府まつりぺきん
佳作34びしゃびしゃにしてみる紙の約束兵庫県八上桐子
佳作33飛行機を何度折っても人になる東京都辻 述
佳作32画紙いっぱい泣き声だけが描いてある奈良県ひとり静
佳作31紙ねんど兵器もパンもひまわりも青森県熊谷冬鼓
佳作30ずっとずっと折りたたまれたままの紙奈良県ひとり静
佳作29雲間から夕陽が出たぞ紙を漉け青森県守田啓子
佳作28蘇る 紙より白き 頰の妻東京都越田清四郎
佳作27副知事の顔から剥がすパラフィン紙北海道宇佐美愼一
佳作26紙魚だけは読み取ってくれたさ…たぶん青森県きさらぎ彼句吾
佳作25懐紙につつむ百歳の股関節北海道澤野優美子
佳作24俺が紙芝居だ山場だぜめくれ宮崎県雨月茄子春
佳作23お利口にしているつもり紙コップ大阪府髙杉 力
佳作22銀紙を口に入れては祖父になる千葉県岡本 朧
佳作21新聞紙しばる戦争縛るように青森県吉見恵子
佳作20紙幣を吸う北島三郎の鼻岡山県藤井智史
佳作19フランシーヌになろうなろうとするティッシュ徳島県徳長 怜
佳作18子が巣立つ母に型紙だけ置いて青森県葉 閑女
佳作17紙風船鱒二の訳を諳んじる青森県髙瀨霜石
佳作16もういいかほなさいならと紙吹雪大阪府峯島 妙
佳作15しゃっくりが続くシャッター街の張り紙京都府岩根彰子
佳作14進次郎ラシクなるまでティッシュオフ青森県きさらぎ彼句吾
佳作13人影のように新聞飛んでゆく秋田県佐渡真紀子
佳作12コウゾ君ミツマタ君を囲む会大阪府小林康浩
佳作11カレンダーに「ら」と書いてある母の未来滋賀県北村幸子
佳作10追っかけて来ないよう折り鶴を置く青森県佐藤雅秀
佳作09岸柳さんを紙風船で捕まえる青森県笹田隆志
佳作08まさかとは思うが紙の裏も見る秋田県佐々木智恵子
佳作07馬糞紙の話題で五分盛り上がり京都府河村啓子
佳作06紙切りの師匠ではなくぬらりひょん東京都飯島章友
佳作05妖精が剥がす空室有りの紙愛知県青砥和子
佳作04くしゃくしゃの浅草紙があったかい青森県笹田かなえ
佳作03オーロラを給紙トレイに入れました大阪府まつりぺきん
佳作02紙っ切れやなんてぞんざいやなあ君兵庫県中西南子
佳作01たとう紙にしまう 静かにしてもらう秋田県斎藤泰子
 
秀逸5紙コップ本名書いてあり ビビる青森県滋野さち
秀逸4紙ストロー萎える妖精吸ったまま東京都小沢 史
秀逸3わかります付箋セラピーやってるね東京都藤田めぐみ
秀逸2バーキンに鯛焼き二個とラブレター大阪府峯島 妙
秀逸1紙燃やすように捨てたよ会津弁千葉県尾崎良仁
 
特選ペーパーレス? ペーもパー子も必要だ大阪府小林康浩
選 評

  【特選】 ペーパーレス? ペーもパー子も必要だ

 年齢のせいで、耳が遠くなったり、いろいろなことの訳が分からなくなっているおじいちゃんと話しているみたいだと思って、にっこりしてしまった句だ。この句、例えば抒情だ批評だ意味性だと真面目に会議をしている部屋に、ちっちゃい手榴弾を投げ込んだような印象がある。それでも無造作に荒っぽく書かれたものではないと思う。よく研いだナイフで切った感じがある。
 あの夫婦漫才のショッキングピンクの衣装や極楽鳥みたいなパー子の笑い声がよぎる。

  【秀逸1】 紙燃やすように捨てたよ会津弁

 心が「しん」とする作品である。色紙に書いて自分の部屋の壁に貼っておきたいくらいだ。「会津弁」だからこそ成立する句だと思う。
 雪の重さや人との関わりや味わった蹉跌が伝わってくる。大阪弁ではこうはいかない。(大阪弁がわるいわけではなく)

  【秀逸2】 バーキンに鯛焼き二個とラブレター

 高級ブランドのバーキンのバッグ・鯛焼き・ラブレター。その落差だけを楽しめばいいのかもしれない。けれども私は、ここに「純情」を感じた。古風な「ラブレター」の力か。
  【秀逸3】 わかります付箋セラピーやってるね

 「あなたの選んだ付箋で深層心理が判ります」というところか。あるいは付箋に書いた内容を分析するのか。「付箋セラピー」は造語であろう。川柳ならではの掴み取り方だと思う。この鮮度を認めたい。

  【秀逸4】 紙ストロー萎える妖精吸ったまま

 某ハンバーガーチェーンの紙ストローを思い出す。飲んでいる途中でブヨブヨして、はなはだ具合がわるかった。「萎える」がいいと思う。妖精は、あの紙の管に閉じ込められたままなのだろう。その人が言いたかったひとことと一緒に。

  【秀逸5】 紙コップ本名書いてあり ビビる

 発想そのものは今までの川柳にもあったかもしれないが「ビビる」にナマの感情が出ている。たとえば、採尿室の小さな窓を開けて本名の書かれた紙コップを置くのが怖い。そしてちょっと情けない。きれいにまとめた句や建前で書かれた句にはない力がある。

 「おかじょうき」十月号の「終着駅」でSinさんが書いておられる。一部抜粋させていただく。
 【「読者」として選ぶ作品と、「選者」として選ぶ作品は違うという感覚である。違わなければならないとも思う。―略―その人が好きな川柳を発表することが「選」ではないと思うのだ。―略―その作品が「自分に書けるかどうか」「自分にその発想ができるかどうか」「自分にこの言葉がチョイスできるか」を考えてみるといいだろう。】
 普段、選句をするときにぼんやりと感じていたことがここに書かれていた。だから自分が選んだ句に微かな違和感というか、性格のわからない猫を抱かせてもらうような感覚に捉われるのかもしれないと思った。
 「おかじょうき」には新しさを感じるが、その一方で地縁ともいえる地道な活動を続けておられる。それを継続してゆく苦労はひとかたではないだろう。
 でも、作品は残ってゆく。こんな時代にそう思えることは希望である。

むさし 選(むさし/青森県・おかじょうき川柳社代表)

佳作44姉は今紅いセロフアン紙の向こう青森県滋野さち
佳作43紙がいい燃えても風に吹かれても秋田県赤石ゆう
佳作42病む母へ筆談会話続けます福岡県城後朱美
佳作41ピアノにも家にもなった小さな紙大阪府浅井ゆず
佳作40月からの招待状は明日まで秋田県佐渡真紀子
佳作39紙風船耳をすませば母の吐息佐賀県桐野みづえ
佳作38紙飛行機ですか果たし状ですか大阪府髙杉 力
佳作37新聞紙しばる戦争縛るように青森県吉見恵子
佳作36ヒコーキに折られた手紙けさ届く大阪府宮井いずみ
佳作35爺ちゃんがばら撒く白紙委任状大阪府岸井ふさゑ
佳作34書き切れぬ思いが紙の上を這う石川県宮田喜美子
佳作33ポスターの鼻の画鋲の奥に雪東京都小沢 史
佳作32「生きるって何」ゆっくりひらく紙つぶて静岡県米山明日歌
佳作31破けちゃった金魚すくいのようですよ青森県守田啓子
佳作30白亜紀を見たくて恐竜折っている大阪府笠嶋恵美子
佳作29トンネルの出口へ誘う紙おむつ埼玉県山田こいし
佳作28人影のように新聞飛んでゆく秋田県佐渡真紀子
佳作27たとう紙にしまう 静かにしてもらう秋田県斎藤泰子
佳作26壁紙と深夜三時の物思い埼玉県野邊富優葉
佳作25しゃっくりが続くシャッター街の張り紙京都府岩根彰子
佳作24今晩のおかずは離婚届です石川県岡本 聡
佳作23再生紙どうしで旅をしませんか大阪府笠嶋恵美子
佳作22トイレットペーパーくるくる生きて来たリズム岩手県熊谷岳朗
佳作21泣いてみせる紙ストローの溶けるまで兵庫県筏井加代子
佳作20俺が紙芝居だ山場だぜめくれ宮崎県雨月茄子春
佳作19お品書き残してあなただけ消えた東京都藤田めぐみ
佳作18ペーパーレス僕も一緒に消えました京都府和田洋子
佳作17お利口にしているつもり紙コップ大阪府髙杉 力
佳作16古紙しばる私もろとも捨ててくる青森県熊谷冬鼓
佳作15ほしいのは今日の苦さを包む紙京都府山本知佳子
佳作14純白の過去は語らぬ再生紙静岡県柳谷益弘
佳作13紙おむつにナンパされちゃった 北海道浪越靖政
佳作12幸せになるはずだった紙コップ愛知県安井紀代子
佳作11紙魚の跡追って卑弥呼に会いに行く埼玉県山田こいし
佳作10猫背の紙切れの渡った交差点福井県みつ木もも花
佳作09障子から朝が素足で入り込む秋田県佐藤春子
佳作08愛したり殺してみたり紙一重大阪府山里はるえ
佳作07美しい紙になあれと水をやる秋田県赤石ゆう
佳作06レシートが1枚あの人はいない青森県まみどり
佳作05遺言書見ました 笑っちゃいました青森県髙瀨霜石
佳作04の途中では紙でしたということとか大阪府雨森茂喜
佳作03やさしさを紙で包んで重くする兵庫県妻木寿美代
佳作02画仙紙も筆も淫らになる真昼青森県葉 閑女
佳作01画紙いっぱい泣き声だけが描いてある奈良県ひとり静
 
秀逸5オーロラを給紙トレイに入れました大阪府まつりぺきん
秀逸4飛行機を何度折っても人になる東京都辻 述
秀逸3ずっとずっと折りたたまれたままの紙奈良県ひとり静
秀逸2くしゃくしゃの紙を伸ばして泣いている兵庫県中西南子
秀逸1追っかけて来ないよう折り鶴を置く青森県佐藤雅秀
 
特選紙屑に一度はなってみるといい神奈川県芝岡かんえもん
選 評

 第29回杉野十佐一賞に多くの方々からご応募をいただきました。誠にありがとうございます。
 選者をお引き受けくださった方々、お忙しい中選考に時間を割いていただき深く感謝申し上げます。
 応募数は、前々回が322句、前回が333句、そして今回は274句となりました。
 前回からの落ち込みが気になりますが、主催者としては応募をありがたく思っております。

 今回の題「紙」は、別の機会に何度も作句されたことがあって作りづらかったことと思います。
 同じ題でこれまでと違った発想の句を作るということは自分の壁を打ち破るということです。果たして壁を破ることができましたでしょうか。

 秀逸3 「折りたたまれた紙」を作者本人のこととして読みました。この紙は、これから開かれることがあるのでしょうか。開かれるとしたら、いつ、どんなふうに開かれるのでしょうか。
 秀逸2 作者が泣いている原因は「くしゃくしゃの紙」です。なぜ「くしゃくしゃの紙」を伸ばしながら泣いているのか書かれていませんが、特別のことが書かれていたのかもしれません。くしゃくしゃにしたのは作者でしょうか。それとも違う誰かでしょうか。答は読者の胸の中にある、ですね。
 秀逸1 「折り鶴」には、これまで「長寿の象徴」や「願いを成就させる物」あるいは「平和のシンボル」というイメージがありましたが、その「折り鶴」とは違う発想のおもしろさがあります。

  特選  紙屑に一度はなってみるといい

 読者に対する人生のアドバイスでしょうか。作者には「紙屑」になった経験が何度もあるようです。「紙屑」を広辞苑で調べると「不用となった紙片。使って捨てた紙。」とあります。一度捨てられて、そこから這い上がって来い。そうしてみんなと肩を並べよう、と言っているような気がします。

応募者ご芳名

【北海道】宇佐美愼一・落合魯忠・河野潤々・澤野優美子・浪越靖政・四ツ屋いずみ
【青森県】石澤はる子・井上健蔵・うつわ・戎踊兵・小野五郎・きさらぎ彼句吾・工藤麦の芽・熊谷冬鼓・嵯峨寛之・坂本清乃・笹田かなえ・笹田隆志・佐藤雅秀・沢田百合子・滋野さち・須藤しんのすけ・高木まあこ・髙瀨霜石・田中 薫・旅男・夏草ふぶき・にじの真美・福士かれん・藤田智恵子・船橋敏昭・まみどり・村上あつこ・守田啓子・葉 閑女・吉見恵子・渡邊こあき
【岩手県】熊谷岳朗
【宮城県】勝又明城・木立時雨
【秋田県】赤石ゆう・一帆・斎藤泰子・佐々木智恵子・佐藤春子・佐渡真紀子・妹尾 凛・田久保亜蘭
【埼玉県】佐野 純・鈴木 雀・野邊富優葉・山田こいし
【千葉県】岡本 朧・尾崎良仁・日下部敦世
【東京都】あさじ・飯島章友・上原 稔・小沢 史・暮田真名・越田清四郎・辻 述・はるのあきこ・藤田めぐみ
【神奈川県】相原あやめ・芝岡かんえもん・下村 修
【新潟県】谷沢けい子
【富山県】金瀬達雄
【石川県】岡本 聡・宮田喜美子
【福井県】みつ木もも花
【長野県】西沢葉火
【岐阜県】早川柚香
【静岡県】中前棋人・柳谷益弘・米山明日歌
【愛知県】青砥和子・安藤なみ・河村けい瑚・黒川利一・瀧村小奈生・中川喜代子・猫田千恵子・松長一歩・安井紀代子
【三重県】奥田悦生・西脇祥貴・山口亜都子
【滋賀県】石寺北次郎・北村幸子・重森恒雄・中島順子・安井茂樹
【京都府】岩根彰子・蟹口和枝・河村啓子・木戸利枝・西山竹里・山本知佳子・和田洋子
【大阪府】浅井ゆず・雨森茂喜・小川佳恵・小原由佳・笠嶋恵美子・岸井ふさゑ・小林康浩・髙杉 力・兵頭全郎・まつりぺきん・峯島 妙・宮井いずみ・山里はるえ
【兵庫県】筏井加代子・大山ありる・妻木寿美代・中西南子・八上桐子
【奈良県】ひとり静・柳本惠子
【鳥取県】斉尾くにこ
【島根県】石橋芳山
【岡山県】藤井智史
【徳島県】徳長 怜
【愛媛県】大内せつ子・郷田みや・村山浩吉
【高知県】小野善江・森乃鈴
【福岡県】城後朱美・もりともみち
【佐賀県】桐野みづえ・嵯峨山登・真島久美子
【熊本県】いわさき楊子
【宮崎県】雨月茄子春・てつろう