(特)むさし(秀)政二(佳)れいこ・ちえみ
紙屑に一度はなってみるといい
芝岡かんえもん(神奈川県)
おかじょうきの奈良一艘さんが亡くなり気落ちしていたところに、とっても嬉しいニュースが届きました。「大賞受賞、おめでとうございます!」あらーあらららー!瞳孔がドーンと開きました(笑)
占い師に11月から名誉運が来ると言われ期待していたのですが、なんと杉野十佐一賞!最高の名誉運がやってきました。
句について一言。この句のバックボーンは怒りです。人への怒り、己への怒りが言葉を紡ぎました。ひょっとしたら怒りは私にむいているのかも知れません。
最後に…これからの作句活動に影響を与えると思う杉野十佐一賞に感謝です。
準 賞(9点)
(秀)政二・むさし(佳)れいこ・由紀子・裕見子
飛行機を何度折っても人になる 辻 述(東京都)
【9点】 | ||
(特)政二(佳)れいこ・由紀子・ちえみ・裕見子 | ||
いちにちはだいたい紙でできている | 滋賀県 | 安井茂樹 |
【8点】 | ||
(秀)ちえみ・むさし(佳)れいこ・裕見子 | ||
追っかけて来ないよう折り鶴を置く | 青森県 | 佐藤雅秀 |
(秀)政二(佳)れいこ・由紀子・ちえみ・裕見子・むさし | ||
人影のように新聞飛んでゆく | 秋田県 | 佐渡真紀子 |
【7点】 | ||
(秀)れいこ・ちえみ(佳)由紀子 | ||
(ゆうやけを)白紙にもどす遣唐使 | 東京都 | 暮田真名 |
(秀)由紀子(佳)政二・れいこ・ちえみ・裕見子 | ||
新聞紙一枚におさまってしまう | 滋賀県 | 安井茂樹 |
(秀)むさし(佳)政二・れいこ・由紀子・裕見子 | ||
ずっとずっと折りたたまれたままの紙 | 奈良県 | ひとり静 |
(秀)ちえみ・むさし(佳)裕見子 | ||
オーロラを給紙トレイに入れました | 大阪府 | まつりぺきん |
(特)由紀子(佳)政二・裕見子 | ||
老人が持ち歩いている紙の束 | 青森県 | 小野五郎 |
【6点】 | ||
(秀)れいこ(佳)ちえみ・裕見子・むさし | ||
たとう紙にしまう 静かにしてもらう | 秋田県 | 斎藤泰子 |
(秀)由紀子(佳)政二・ちえみ・むさし | ||
遺言書見ました 笑っちゃいました | 青森県 | 髙瀨霜石 |
(秀)れいこ(佳)由紀子・ちえみ・裕見子 | ||
紙ねんど兵器もパンもひまわりも | 青森県 | 熊谷冬鼓 |
(秀)れいこ(佳)政二・由紀子・裕見子 | ||
もういいかほなさいならと紙吹雪 | 大阪府 | 峯島 妙 |
(秀)由紀子(佳)政二・れいこ・むさし | ||
ピアノにも家にもなった小さな紙 | 大阪府 | 浅井ゆず |
(特)ちえみ(佳)れいこ | ||
半券はもう伝説になるつもり | 大阪府 | 小原由佳 |
(特)れいこ(佳)由紀子 | ||
あまりにも付箋とてつもなくテイッシュ | 大阪府 | 雨森茂喜 |
【5点】 | ||
(秀)政二(佳)由紀子・ちえみ | ||
カステラの紙でしたけど まだなにか? | 北海道 | 宇佐美愼一 |
(秀)政二(佳)ちえみ・裕見子 | ||
まさかとは思うが紙の裏も見る | 秋田県 | 佐々木智恵子 |
(佳)政二・由紀子・ちえみ・裕見子・むさし | ||
お利口にしているつもり紙コップ | 大阪府 | 髙杉 力 |
(佳)政二・れいこ・由紀子・ちえみ・むさし | ||
姉は今紅いセロフアン紙の向こう | 青森県 | 滋野さち |
(佳)政二・れいこ・由紀子・ちえみ・裕見子 | ||
紙ですから少し信用されてます | 大阪府 | 浅井ゆず |
(特)裕見子 | ||
ペーパーレス? ペーもパー子も必要だ | 大阪府 | 小林康浩 |
【4点】 | ||
(秀)裕見子(佳)ちえみ | ||
紙燃やすように捨てたよ会津弁 | 千葉県 | 尾崎良仁 |
(秀)ちえみ(佳)由紀子 | ||
カステラの紙を今更はがせない | 秋田県 | 佐々木智恵子 |
(秀)むさし(佳)ちえみ | ||
くしゃくしゃの紙を伸ばして泣いている | 兵庫県 | 中西南子 |
(秀)裕見子(佳)由紀子 | ||
バーキンに鯛焼き二個とラブレター | 大阪府 | 峯島 妙 |
(秀)裕見子(佳)ちえみ | ||
わかります付箋セラピーやってるね | 東京都 | 藤田めぐみ |
(秀)ちえみ(佳)由紀子 | ||
表紙になっても足のウラだとわかる | 愛媛県 | 村山浩吉 |
(秀)由紀子(佳)むさし | ||
トイレットペーパーくるくる生きて来たリズム | 岩手県 | 熊谷岳朗 |
(秀)れいこ(佳)裕見子 | ||
終わりそうな君と短いレシートと | 滋賀県 | 北村幸子 |
(秀)裕見子(佳)れいこ | ||
紙コップ本名書いてあり ビビる | 青森県 | 滋野さち |
(佳)れいこ・由紀子・裕見子・むさし | ||
画紙いっぱい泣き声だけが描いてある | 奈良県 | ひとり静 |
(佳)由紀子・ちえみ・裕見子・むさし | ||
新聞紙しばる戦争縛るように | 青森県 | 吉見恵子 |
【3点】 | ||
(秀)由紀子 | ||
新聞紙くしゅくしゅ穴を埋めつくす | 兵庫県 | 筏井加代子 |
(秀)裕見子 | ||
紙ストロー萎える妖精吸ったまま | 東京都 | 小沢 史 |
(佳)政二・れいこ・ちえみ | ||
わかりましたと表紙はいつも青い空 | 京都府 | 山本知佳子 |
(佳)れいこ・由紀子・ちえみ | ||
リトマス紙青になったら踊るわよ | 北海道 | 四ツ屋いずみ |
(佳)れいこ・由紀子・ちえみ | ||
ぺらの街 ぺらの私の棲むところ | 京都府 | 蟹口和枝 |
(佳)れいこ・ちえみ・裕見子 | ||
カレンダーに「ら」と書いてある母の未来 | 滋賀県 | 北村幸子 |
(佳)政二・れいこ・むさし | ||
美しい紙になあれと水をやる | 秋田県 | 赤石ゆう |
(佳)由紀子・ちえみ・むさし | ||
の途中では紙でしたということとか | 大阪府 | 雨森茂喜 |
(佳)ちえみ・裕見子・むさし | ||
俺が紙芝居だ山場だぜめくれ | 宮崎県 | 雨月茄子春 |
(佳)由紀子・ちえみ・裕見子 | ||
コウゾ君ミツマタ君を囲む会 | 大阪府 | 小林康浩 |
(佳)政二・ちえみ・むさし | ||
破けちゃった金魚すくいのようですよ | 青森県 | 守田啓子 |
(佳)れいこ・由紀子・ちえみ | ||
舌はもう原稿用紙モードです | 徳島県 | 徳長 怜 |
(佳)れいこ・由紀子・むさし | ||
白亜紀を見たくて恐竜折っている | 大阪府 | 笠嶋恵美子 |
(佳)政二・れいこ・むさし | ||
ポスターの鼻の画鋲の奥に雪 | 東京都 | 小沢 史 |
(佳)政二・れいこ・むさし | ||
紙がいい燃えても風に吹かれても | 秋田県 | 赤石ゆう |
(佳)政二・れいこ・ちえみ | ||
できるだけ大きな紙で包む嘘 | 京都府 | 西山竹里 |
(佳)政二・れいこ・由紀子 | ||
裏紙のチカラコブまだ温かい | 青森県 | にじの真美 |
(佳)れいこ・由紀子・裕見子 | ||
曇のち収入印紙または棘 | 大阪府 | まつりぺきん |
【2点】 | ||
(佳)政二・むさし | ||
やさしさを紙で包んで重くする | 兵庫県 | 妻木寿美代 |
(佳)ちえみ・裕見子 | ||
妖精が剥がす空室有りの紙 | 愛知県 | 青砥和子 |
(佳)由紀子・むさし | ||
猫背の紙切れの渡った交差点 | 福井県 | みつ木もも花 |
(佳)政二・むさし | ||
幸せになるはずだった紙コップ | 愛知県 | 安井紀代子 |
(佳)政二・由紀子 | ||
何ひとつ紙に逆うことはない | 青森県 | 坂本清乃 |
(佳)政二・由紀子 | ||
あくまでも紙であろうとする紙幣 | 兵庫県 | 妻木寿美代 |
(佳)政二・ちえみ | ||
紙だから説得力はありません。 | 大阪府 | 岸井ふさゑ |
(佳)由紀子・裕見子 | ||
くしゃくしゃの浅草紙があったかい | 青森県 | 笹田かなえ |
(佳)政二・ちえみ | ||
上手く描けたら夕陽はキミにあげる | 青森県 | 須藤しんのすけ |
(佳)裕見子・むさし | ||
しゃっくりが続くシャッター街の張り紙 | 京都府 | 岩根彰子 |
(佳)政二・由紀子 | ||
紙の人形(ひとがた)にかおを描く つながる | 愛知県 | 黒川利一 |
(佳)政二・むさし | ||
ヒコーキに折られた手紙けさ届く | 大阪府 | 宮井いずみ |
(佳)ちえみ・むさし | ||
ほしいのは今日の苦さを包む紙 | 京都府 | 山本知佳子 |
(佳)れいこ・ちえみ | ||
エリーゼの夜なめらかな紙になる | 滋賀県 | 重森恒雄 |
(佳)れいこ・由紀子 | ||
あらかたは雲のかけらかいろ紙か | 北海道 | 澤野優美子 |
(佳)政二・むさし | ||
ペーパーレス僕も一緒に消えました | 京都府 | 和田洋子 |
(佳)政二・むさし | ||
古紙しばる私もろとも捨ててくる | 青森県 | 熊谷冬鼓 |
(佳)政二・むさし | ||
「生きるって何」ゆっくりひらく紙つぶて | 静岡県 | 米山明日歌 |
(佳)由紀子・ちえみ | ||
許されていいのは紙の重さまで | 東京都 | はるのあきこ |
(佳)政二・ちえみ | ||
応用編は得意技です段ボール | 青森県 | にじの真美 |
(佳)れいこ・むさし | ||
爺ちゃんがばら撒く白紙委任状 | 大阪府 | 岸井ふさゑ |
(佳)ちえみ・裕見子 | ||
副知事の顔から剥がすパラフィン紙 | 北海道 | 宇佐美愼一 |
(佳)ちえみ・裕見子 | ||
馬糞紙の話題で五分盛り上がり | 京都府 | 河村啓子 |
(佳)れいこ・裕見子 | ||
びしゃびしゃにしてみる紙の約束 | 兵庫県 | 八上桐子 |
(佳)ちえみ・むさし | ||
今晩のおかずは離婚届です | 石川県 | 岡本 聡 |
(佳)裕見子・むさし | ||
再生紙どうしで旅をしませんか | 大阪府 | 笠嶋恵美子 |
(佳)由紀子・裕見子 | ||
ねむるのがいつからむずかしい白紙 | 兵庫県 | 八上桐子 |
(佳)ちえみ・むさし | ||
月からの招待状は明日まで | 秋田県 | 佐渡真紀子 |
(佳)れいこ・由紀子 | ||
つつみこむまもるつたえるふれる紙 | 岐阜県 | 早川柚香 |
(佳)由紀子・裕見子 | ||
新聞を一枚かけてイブとアダム | 秋田県 | 田久保亜蘭 |
(佳)政二・ちえみ | ||
【1点】 | ||
紙のないトイレに非常ボタン押す | 島根県 | 石橋芳山 |
(佳)裕見子 | ||
紙っ切れやなんてぞんざいやなあ君 | 兵庫県 | 中西南子 |
(佳)むさし | ||
画仙紙も筆も淫らになる真昼 | 青森県 | 葉 閑女 |
(佳)れいこ | ||
ちり紙の話になると本気出す | 千葉県 | 尾崎良仁 |
(佳)政二 | ||
おふくろのかな文字だけの手紙着く | 東京都 | あさじ |
(佳)れいこ | ||
熱帯夜に身もだえをする感熱紙 | 京都府 | 西山竹里 |
(佳)裕見子 | ||
紙切りの師匠ではなくぬらりひょん | 東京都 | 飯島章友 |
(佳)むさし | ||
レシートが1枚あの人はいない | 青森県 | まみどり |
(佳)ちえみ | ||
白紙撤回 スズメいっせいに飛び立つ | 神奈川県 | 芝岡かんえもん |
(佳)むさし | ||
愛したり殺してみたり紙一重 | 大阪府 | 山里はるえ |
(佳)裕見子 | ||
岸柳さんを紙風船で捕まえる | 青森県 | 笹田隆志 |
(佳)むさし | ||
障子から朝が素足で入り込む | 秋田県 | 佐藤春子 |
(佳)政二 | ||
かさばらぬよう折って畳んだ一生を | 大阪府 | 山里はるえ |
(佳)むさし | ||
紙魚の跡追って卑弥呼に会いに行く | 埼玉県 | 山田こいし |
(佳)むさし | ||
紙おむつにナンパされちゃった | 北海道 | 浪越靖政 |
(佳)裕見子 | ||
進次郎ラシクなるまでティッシュオフ | 青森県 | きさらぎ彼句吾 |
(佳)むさし | ||
純白の過去は語らぬ再生紙 | 静岡県 | 柳谷益弘 |
(佳)れいこ | ||
ちり紙を揉ませてみればわかります | 北海道 | 河野潤々 |
(佳)れいこ | ||
横紙を破れば白い蛇、二匹 | 宮崎県 | 雨月茄子春 |
(佳)裕見子 | ||
紙風船鱒二の訳を諳んじる | 青森県 | 髙瀨霜石 |
(佳)政二 | ||
判を押すのは風ですか紙ですか | 福井県 | みつ木もも花 |
(佳)裕見子 | ||
子が巣立つ母に型紙だけ置いて | 青森県 | 葉 閑女 |
(佳)れいこ | ||
二度折って開けばわるいようちえん | 三重県 | 西脇祥貴 |
(佳)裕見子 | ||
フランシーヌになろうなろうとするティッシュ | 徳島県 | 徳長 怜 |
(佳)むさし | ||
お品書き残してあなただけ消えた | 東京都 | 藤田めぐみ |
(佳)れいこ | ||
じゃんけんはぱあプロペラは一回休み | 鳥取県 | 斉尾くにこ |
(佳)裕見子 | ||
紙幣を吸う北島三郎の鼻 | 岡山県 | 藤井智史 |
(佳)政二 | ||
紙飛行機ふわりと降りる部屋あかり | 青森県 | 工藤麦の芽 |
(佳)むさし | ||
泣いてみせる紙ストローの溶けるまで | 兵庫県 | 筏井加代子 |
(佳)裕見子 | ||
銀紙を口に入れては祖父になる | 千葉県 | 岡本 朧 |
(佳)政二 | ||
勢いの一夜めくれし紙の朝 | 青森県 | 旅 男 |
(佳)ちえみ | ||
十五夜に白紙委任をして眠る | 青森県 | 渡邊こあき |
(佳)由紀子 | ||
漉いて漉かれてペラッぺらの本物 | 青森県 | 田中 薫 |
(佳)裕見子 | ||
懐紙につつむ百歳の股関節 | 北海道 | 澤野優美子 |
(佳)由紀子 | ||
雁皮紙に水茎の跡は典麗 | 埼玉県 | 佐野 純 |
(佳)政二 | ||
紙いちまい燃えたりも飛んだりもする | 愛知県 | 瀧村小奈生 |
(佳)れいこ | ||
介護する みな柔らかな捨てる紙 | 青森県 | 戎踊兵 |
(佳)裕見子 | ||
紙魚だけは読み取ってくれたさ…たぶん | 青森県 | きさらぎ彼句吾 |
(佳)むさし | ||
壁紙と深夜三時の物思い | 埼玉県 | 野邊富優葉 |
(佳)れいこ | ||
捺印の済んだ紙から鶴になる | 大阪府 | 小原由佳 |
(佳)れいこ | ||
和紙に筆 便箋にペン 月に雲 | 青森県 | 高木まあこ |
(佳)裕見子 | ||
蘇る 紙より白き 頰の妻 | 東京都 | 越田清四郎 |
(佳)由紀子 | ||
画用紙をくってしまった駿河湾 | 静岡県 | 中前棋人 |
(佳)裕見子 | ||
雲間から夕陽が出たぞ紙を漉け | 青森県 | 守田啓子 |
(佳)由紀子 | ||
泣き笑い今日も拍子木紙芝居 | 三重県 | 奥田悦生 |
(佳)むさし | ||
トンネルの出口へ誘う紙おむつ | 埼玉県 | 山田こいし |
(佳)ちえみ | ||
一線を越える紙ヒコーキのこころ | 青森県 | 笹田かなえ |
(佳)れいこ | ||
付箋紙の赤が性格の不一致 | 青森県 | 井上健蔵 |
(佳)政二 | ||
紙屑を積み上げバーガー店を出る | 大阪府 | 小川佳恵 |
(佳)ちえみ | ||
立派な紙でした人生でした つづく | 青森県 | 田中 薫 |
(佳)政二 | ||
僕トイレットペーパーになれません | 石川県 | 岡本 聡 |
(佳)由紀子 | ||
のしに包まれ私のたどり着いた海 | 秋田県 | 佐藤春子 |
(佳)政二 | ||
紙吹雪そして選んだ樹木葬 | 青森県 | まみどり |
(佳)むさし | ||
書き切れぬ思いが紙の上を這う | 石川県 | 宮田喜美子 |
(佳)れいこ | ||
1ドルは143.91円椿事はさて | 奈良県 | 柳本惠子 |
(佳)政二 | ||
折り鶴に母の命を吹きこまん | 福岡県 | 城後朱美 |
(佳)れいこ | ||
秋のチェロ空色になるリトマス紙 | 秋田県 | 妹尾 凛 |
(佳)政二 | ||
さよならはお任せします再生紙 | 愛媛県 | 郷田みや |
(佳)ちえみ | ||
紙の本から銀河へ行って来たところ | 北海道 | 四ツ屋いずみ |
(佳)裕見子 | ||
紙が笑い私も今日は上機嫌 | 岩手県 | 熊谷岳朗 |
(佳)むさし | ||
紙飛行機ですか果たし状ですか | 大阪府 | 髙杉 力 |
(佳)由紀子 | ||
半額のアイスのチラシ@ヒロシマ | 京都府 | 岩根彰子 |
(佳)政二 | ||
たとう紙開いて亡母に会いに行く | 宮崎県 | てつろう |
(佳)むさし | ||
紙風船耳をすませば母の吐息 | 佐賀県 | 桐野みづえ |
(佳)れいこ | ||
赤紙のゆるキャラが来て盆踊り | 東京都 | 辻 述 |
(佳)由紀子 | ||
クラウドは綿菓子の味白ヤギさん | 熊本県 | いわさき楊子 |
(佳)政二 | ||
沖までは握り締めてる紙テープ | 京都府 | 和田洋子 |
(佳)政二 | ||
とりあえず紙とエンピツ用意する | 秋田県 | 田久保亜蘭 |
(佳)由紀子 | ||
戦いは紙風船の数競う | 高知県 | 森乃鈴 |
(佳)政二 | ||
五線紙に蛙の子らを泳がせる | 青森県 | 船橋敏昭 |
(佳)むさし | ||
病む母へ筆談会話続けます | 福岡県 | 城後朱美 |
(佳)れいこ | ||
紙だった右手で拭っている涙 | 神奈川県 | 相原あやめ |
(佳)ちえみ | ||
巻き紙の阿弥陀籤を引かされる | 愛知県 | 中川喜代子 |
(佳)由紀子 | ||
日本の頭を決める阿弥陀籤 | 静岡県 | 中前棋人 |
佳作44 | もういいかほなさいならと紙吹雪 | 大阪府 | 峯島 妙 |
佳作43 | 紙ですから少し信用されてます | 大阪府 | 浅井ゆず |
佳作42 | 五線紙に蛙の子らを泳がせる | 青森県 | 船橋敏昭 |
佳作41 | とりあえず紙とエンピツ用意する | 秋田県 | 田久保亜蘭 |
佳作40 | 沖までは握り締めてる紙テープ | 京都府 | 和田洋子 |
佳作39 | たとう紙開いて亡母に会いに行く | 宮崎県 | てつろう |
佳作38 | 紙のないトイレに非常ボタン押す | 島根県 | 石橋芳山 |
佳作37 | 遺言書見ました 笑っちゃいました | 青森県 | 髙瀨霜石 |
佳作36 | さよならはお任せします再生紙 | 愛媛県 | 郷田みや |
佳作35 | 折り鶴に母の命を吹きこまん | 福岡県 | 城後朱美 |
佳作34 | 紙吹雪そして選んだ樹木葬 | 青森県 | まみどり |
佳作33 | 僕トイレットペーパーになれません | 石川県 | 岡本 聡 |
佳作32 | ポスターの鼻の画鋲の奥に雪 | 東京都 | 小沢 史 |
佳作31 | 紙屑を積み上げバーガー店を出る | 大阪府 | 小川佳恵 |
佳作30 | 紙だから説得力はありません。 | 大阪府 | 岸井ふさゑ |
佳作29 | ピアノにも家にもなった小さな紙 | 大阪府 | 浅井ゆず |
佳作28 | 古紙しばる私もろとも捨ててくる | 青森県 | 熊谷冬鼓 |
佳作27 | 破けちゃった金魚すくいのようですよ | 青森県 | 守田啓子 |
佳作26 | ペーパーレス僕も一緒に消えました | 京都府 | 和田洋子 |
佳作25 | 紙いちまい燃えたりも飛んだりもする | 愛知県 | 瀧村小奈生 |
佳作24 | わかりましたと表紙はいつも青い空 | 京都府 | 山本知佳子 |
佳作23 | 上手く描けたら夕陽はキミにあげる | 青森県 | 須藤しんのすけ |
佳作22 | 勢いの一夜めくれし紙の朝 | 青森県 | 旅 男 |
佳作21 | 紙飛行機ふわりと降りる部屋あかり | 青森県 | 工藤麦の芽 |
佳作20 | 姉は今紅いセロフアン紙の向こう | 青森県 | 滋野さち |
佳作19 | 応用編は得意技です段ボール | 青森県 | にじの真美 |
佳作18 | 裏紙のチカラコブまだ温かい | 青森県 | にじの真美 |
佳作17 | 判を押すのは風ですか紙ですか | 福井県 | みつ木もも花 |
佳作16 | あくまでも紙であろうとする紙幣 | 兵庫県 | 妻木寿美代 |
佳作15 | できるだけ大きな紙で包む嘘 | 京都府 | 西山竹里 |
佳作14 | 美しい紙になあれと水をやる | 秋田県 | 赤石ゆう |
佳作13 | 「生きるって何」ゆっくりひらく紙つぶて | 静岡県 | 米山明日歌 |
佳作12 | 何ひとつ紙に逆うことはない | 青森県 | 坂本清乃 |
佳作11 | 紙がいい燃えても風に吹かれても | 秋田県 | 赤石ゆう |
佳作10 | かさばらぬよう折って畳んだ一生を | 大阪府 | 山里はるえ |
佳作09 | 新聞紙一枚におさまってしまう | 滋賀県 | 安井茂樹 |
佳作08 | ずっとずっと折りたたまれたままの紙 | 奈良県 | ひとり静 |
佳作07 | 幸せになるはずだった紙コップ | 愛知県 | 安井紀代子 |
佳作06 | ヒコーキに折られた手紙けさ届く | 大阪府 | 宮井いずみ |
佳作05 | おふくろのかな文字だけの手紙着く | 東京都 | あさじ |
佳作04 | やさしさを紙で包んで重くする | 兵庫県 | 妻木寿美代 |
佳作03 | 老人が持ち歩いている紙の束 | 青森県 | 小野五郎 |
佳作02 | 紙の人形(ひとがた)にかおを描く つながる | 愛知県 | 黒川利一 |
佳作01 | お利口にしているつもり紙コップ | 大阪府 | 髙杉 力 |
秀逸5 | まさかとは思うが紙の裏も見る | 秋田県 | 佐々木智恵子 |
秀逸4 | カステラの紙でしたけど まだなにか? | 北海道 | 宇佐美愼一 |
秀逸3 | 飛行機を何度折っても人になる | 東京都 | 辻 述 |
秀逸2 | 紙屑に一度はなってみるといい | 神奈川県 | 芝岡かんえもん |
秀逸1 | 人影のように新聞飛んでゆく | 秋田県 | 佐渡真紀子 |
特選 | いちにちはだいたい紙でできている | 滋賀県 | 安井茂樹 |
今回の課題は「紙」。この題はほかのところで一度経験しているが、その時は「折り紙」の句が中心だった。
しかし、十佐一賞は違っていた。新しい魅力のある句がたくさん集まった。
毎年、題によって集まる句が違ってくるので、考える方も大変である。
これが人間の心理かもしれない。いい知らせもそうでない知らせも、つい裏を確かめてしまう。そして、何もなかったことに安心する。
「まだなにか?」がおもしろい。
ゆっくりはがすカステラの底にひっついている紙には何か特別なものがある。その実感にうなずく。
「人になる」に納得。
誰かに向かって飛んでいるような一枚の紙が飛行機になって呼吸をしている。
実感が伝わるような書き方が魅力だが、しかし、なってみなければわからない。紙屑に聞いても答えてはくれない。
「人影」がいい。
新聞紙が風に舞っている景色は何度か目にしている。
人間のことがいっぱい書かれた新聞。
簡単なようだが難しい「紙」からの着想である。
確かに過ぎてしまえばただの紙切れのような一日。
シンプルな書き方がいい。
佳作44 | できるだけ大きな紙で包む嘘 | 京都府 | 西山竹里 |
佳作43 | 裏紙のチカラコブまだ温かい | 青森県 | にじの真美 |
佳作42 | 紙だった右手で拭っている涙 | 神奈川県 | 相原あやめ |
佳作41 | 曇のち収入印紙または棘 | 大阪府 | まつりぺきん |
佳作40 | 舌はもう原稿用紙モードです | 徳島県 | 徳長 怜 |
佳作39 | 赤紙のゆるキャラが来て盆踊り | 東京都 | 辻 述 |
佳作38 | 紙ですから少し信用されてます | 大阪府 | 浅井ゆず |
佳作37 | つつみこむまもるつたえるふれる紙 | 岐阜県 | 早川柚香 |
佳作36 | 人影のように新聞飛んでゆく | 秋田県 | 佐渡真紀子 |
佳作35 | 秋のチェロ空色になるリトマス紙 | 秋田県 | 妹尾 凛 |
佳作34 | 1ドルは143.91円椿事はさて | 奈良県 | 柳本惠子 |
佳作33 | 紙がいい燃えても風に吹かれても | 秋田県 | 赤石ゆう |
佳作32 | 美しい紙になあれと水をやる | 秋田県 | 赤石ゆう |
佳作31 | 画紙いっぱい泣き声だけが描いてある | 奈良県 | ひとり静 |
佳作30 | 付箋紙の赤が性格の不一致 | 青森県 | 井上健蔵 |
佳作29 | 紙屑に一度はなってみるといい | 神奈川県 | 芝岡かんえもん |
佳作28 | いちにちはだいたい紙でできている | 滋賀県 | 安井茂樹 |
佳作27 | 和紙に筆 便箋にペン 月に雲 | 青森県 | 高木まあこ |
佳作26 | 捺印の済んだ紙から鶴になる | 大阪府 | 小原由佳 |
佳作25 | 介護する みな柔らかな捨てる紙 | 青森県 | 戎踊兵 |
佳作24 | エリーゼの夜なめらかな紙になる | 滋賀県 | 重森恒雄 |
佳作23 | 白亜紀を見たくて恐竜折っている | 大阪府 | 笠嶋恵美子 |
佳作22 | 紙コップ本名書いてあり ビビる | 青森県 | 滋野さち |
佳作21 | びしゃびしゃにしてみる紙の約束 | 兵庫県 | 八上桐子 |
佳作20 | 新聞紙一枚におさまってしまう | 滋賀県 | 安井茂樹 |
佳作19 | じゃんけんはぱあプロペラは一回休み | 鳥取県 | 斉尾くにこ |
佳作18 | 二度折って開けばわるいようちえん | 三重県 | 西脇祥貴 |
佳作17 | ぺらの街 ぺらの私の棲むところ | 京都府 | 蟹口和枝 |
佳作16 | 横紙を破れば白い蛇、二匹 | 宮崎県 | 雨月茄子春 |
佳作15 | ちり紙を揉ませてみればわかります | 北海道 | 河野潤々 |
佳作14 | ピアノにも家にもなった小さな紙 | 大阪府 | 浅井ゆず |
佳作13 | あらかたは雲のかけらかいろ紙か | 北海道 | 澤野優美子 |
佳作12 | 飛行機を何度折っても人になる | 東京都 | 辻 述 |
佳作11 | 爺ちゃんがばら撒く白紙委任状 | 大阪府 | 岸井ふさゑ |
佳作10 | リトマス紙青になったら踊るわよ | 北海道 | 四ツ屋いずみ |
佳作09 | 姉は今紅いセロフアン紙の向こう | 青森県 | 滋野さち |
佳作08 | ずっとずっと折りたたまれたままの紙 | 奈良県 | ひとり静 |
佳作07 | ポスターの鼻の画鋲の奥に雪 | 東京都 | 小沢 史 |
佳作06 | 追っかけて来ないよう折り鶴を置く | 青森県 | 佐藤雅秀 |
佳作05 | 熱帯夜に身もだえをする感熱紙 | 京都府 | 西山竹里 |
佳作04 | ちり紙の話になると本気出す | 千葉県 | 尾崎良仁 |
佳作03 | わかりましたと表紙はいつも青い空 | 京都府 | 山本知佳子 |
佳作02 | 半券はもう伝説になるつもり | 大阪府 | 小原由佳 |
佳作01 | カレンダーに「ら」と書いてある母の未来 | 滋賀県 | 北村幸子 |
秀逸5 | もういいかほなさいならと紙吹雪 | 大阪府 | 峯島 妙 |
秀逸4 | 終わりそうな君と短いレシートと | 滋賀県 | 北村幸子 |
秀逸3 | 紙ねんど兵器もパンもひまわりも | 青森県 | 熊谷冬鼓 |
秀逸2 | (ゆうやけを)白紙にもどす遣唐使 | 東京都 | 暮田真名 |
秀逸1 | たとう紙にしまう 静かにしてもらう | 秋田県 | 斎藤泰子 |
特選 | あまりにも付箋とてつもなくテイッシュ | 大阪府 | 雨森茂喜 |
特選に選んだ句は初見から頭にこびりついて、今でもこびりついたままだ。そのせいで付箋を貼るときも、ティッシュを使うときも、あまりにも、とか、とてつもなく、とか、どこからか声が聞こえるのだ。なにしてくれるねん。ともあれ、私のなかでの付箋とテッシュの概念は変わった。私はナンセンスな川柳なんて無いと、かたくなに思ってる。掲句は一見そう見えるけど、ここには「あまりにも」と「付箋」の関係「とてつもなく」と「ティッシュ」の関係が書かれているのだ。万が一、私が知らないだけで「あまりにも○○とてつもなく○○」という構文があるとして、そこに付箋とテッシュを思いついたことが、単純にすごいと思う。
秀逸5句については、思いっきり川柳の幅の広さを活用させていただいた。
この句にある仄暗い怖さは、何をしまうのか、が書かれていないところにある。「静かにして」が何を意味するのかも含めて、怖い。
誰もが暗記したことのある懐かしいフレーズだ。そんな年号の語呂合わせを下敷きにした機知に溢れた一句。カッコで括られた、ゆうやけが機知を詩に引き寄せていて、そこにいちばん惹かれた。
紙ねんどで作られた「パン」と「ひまわり」に「兵器」が混じる。絵本テイストのイメージにノイズが混じる。やわらかな書き方なだけに、いま、そこにある危機が伝わってくる。
現代社会を生きているリアルが書かれていた切ない。「終わりそうな」の終わりは、書かれていない「わたし」との関係なのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。「短いレシート」がリアルさの主柱。
ものすごいめんどくさがってて、おかしい。大阪弁でしか表現できない軽さもあって紙吹雪が妙に効いている。
佳作44 | 日本の頭を決める阿弥陀籤 | 静岡県 | 中前棋人 |
佳作43 | 紙ねんど兵器もパンもひまわりも | 青森県 | 熊谷冬鼓 |
佳作42 | 戦いは紙風船の数競う | 高知県 | 森乃鈴 |
佳作41 | 新聞を一枚かけてイブとアダム | 秋田県 | 田久保亜蘭 |
佳作40 | クラウドは綿菓子の味白ヤギさん | 熊本県 | いわさき楊子 |
佳作39 | 半額のアイスのチラシ@ヒロシマ | 京都府 | 岩根彰子 |
佳作38 | 紙の人形(ひとがた)にかおを描く つながる | 愛知県 | 黒川利一 |
佳作37 | 表紙になっても足のウラだとわかる | 愛媛県 | 村山浩吉 |
佳作36 | 曇のち収入印紙または棘 | 大阪府 | まつりぺきん |
佳作35 | 裏紙のチカラコブまだ温かい | 青森県 | にじの真美 |
佳作34 | のしに包まれ私のたどり着いた海 | 秋田県 | 佐藤春子 |
佳作33 | 新聞紙しばる戦争縛るように | 青森県 | 吉見恵子 |
佳作32 | くしゃくしゃの浅草紙があったかい | 青森県 | 笹田かなえ |
佳作31 | つつみこむまもるつたえるふれる紙 | 岐阜県 | 早川柚香 |
佳作30 | あらかたは雲のかけらかいろ紙か | 北海道 | 澤野優美子 |
佳作29 | 泣き笑い今日も拍子木紙芝居 | 三重県 | 奥田悦生 |
佳作28 | 画用紙をくってしまった駿河湾 | 静岡県 | 中前棋人 |
佳作27 | お利口にしているつもり紙コップ | 大阪府 | 髙杉 力 |
佳作26 | 許されていいのは紙の重さまで | 東京都 | はるのあきこ |
佳作25 | 雁皮紙に水茎の跡は典麗 | 埼玉県 | 佐野 純 |
佳作24 | 漉いて漉かれてペラッぺらの本物 | 青森県 | 田中 薫 |
佳作23 | もういいかほなさいならと紙吹雪 | 大阪府 | 峯島 妙 |
佳作22 | ねむるのがいつからむずかしい白紙 | 兵庫県 | 八上桐子 |
佳作21 | カステラの紙を今更はがせない | 秋田県 | 佐々木智恵子 |
佳作20 | 姉は今紅いセロフアン紙の向こう | 青森県 | 滋野さち |
佳作19 | 紙ですから少し信用されてます | 大阪府 | 浅井ゆず |
佳作18 | 舌はもう原稿用紙モードです | 徳島県 | 徳長 怜 |
佳作17 | 白亜紀を見たくて恐竜折っている | 大阪府 | 笠嶋恵美子 |
佳作16 | バーキンに鯛焼き二個とラブレター | 大阪府 | 峯島 妙 |
佳作15 | の途中では紙でしたということとか | 大阪府 | 雨森茂喜 |
佳作14 | 何ひとつ紙に逆うことはない | 青森県 | 坂本清乃 |
佳作13 | あくまでも紙であろうとする紙幣 | 兵庫県 | 妻木寿美代 |
佳作12 | ずっとずっと折りたたまれたままの紙 | 奈良県 | ひとり静 |
佳作11 | ぺらの街 ぺらの私の棲むところ | 京都府 | 蟹口和枝 |
佳作10 | リトマス紙青になったら踊るわよ | 北海道 | 四ツ屋いずみ |
佳作09 | 画紙いっぱい泣き声だけが描いてある | 奈良県 | ひとり静 |
佳作08 | 猫背の紙切れの渡った交差点 | 福井県 | みつ木もも花 |
佳作07 | (ゆうやけを)白紙にもどす遣唐使 | 東京都 | 暮田真名 |
佳作06 | コウゾ君ミツマタ君を囲む会 | 大阪府 | 小林康浩 |
佳作05 | カステラの紙でしたけど まだなにか? | 北海道 | 宇佐美愼一 |
佳作04 | いちにちはだいたい紙でできている | 滋賀県 | 安井茂樹 |
佳作03 | あまりにも付箋とてつもなくテイッシュ | 大阪府 | 雨森茂喜 |
佳作02 | 飛行機を何度折っても人になる | 東京都 | 辻 述 |
佳作01 | 人影のように新聞飛んでゆく | 秋田県 | 佐渡真紀子 |
秀逸5 | ピアノにも家にもなった小さな紙 | 大阪府 | 浅井ゆず |
秀逸4 | トイレットペーパーくるくる生きて来たリズム | 岩手県 | 熊谷岳朗 |
秀逸3 | 新聞紙くしゅくしゅ穴を埋めつくす | 兵庫県 | 筏井加代子 |
秀逸2 | 遺言書見ました 笑っちゃいました | 青森県 | 髙瀨霜石 |
秀逸1 | 新聞紙一枚におさまってしまう | 滋賀県 | 安井茂樹 |
特選 | 老人が持ち歩いている紙の束 | 青森県 | 小野五郎 |
【特選】老人が持ち歩いている紙の束
昨年の杉野十佐一賞大賞の句と仕立て方が似ているので、最後まで迷ったがやはり落とせなかった。「老人」と「紙の束」にリアリティがありすぎて、圧倒された。「老人」を見事に描写している。誰もが等しく「老人」になる。「紙の束」はなにか。ただの無駄な紙かもしれない。札束かもしれない。二つの名詞をつないでいる「持ち歩いている」もぴったりとはまっている。
豊かな消費社会への警告だろうか。消費社会であるがゆえの喪失感が際立っている。この姿は過去の、現在の、未来の、私たち自身である。この句の底には根源的寂しさがある。その姿を想像するだけで切なく、哀しくなる。言葉の一つ一つの意味をきちんと立ち上げながら、映像的な虚構性をまとわせて、川柳に仕上げている。
新聞紙一枚におさまってしまう
何を、どのようにすれば、なぜそうなるのか。具立的には何も書かれていない。新聞紙一枚に書かれていることは、人生全般もそのような気がしないでもない。しかし、それを嘆いているのでもなさそうである。そんなものだと思っているのだ、きっと。
遺言書見ました笑っちゃいました
そんな遺言書を作ってみたいものだとまず思った。「遺言書」というわりと重たいものが、「笑っちゃいました」とどんでん返しする。「ほなさいなら」と書いたほんわかするイラスト入りだったのかもしれない。
新聞紙くしゅくしゅ穴を埋めつくす
トイレットペーパーくるくる生きて来たリズム
ピアノにも家にもなった小さな紙
誰もが思い当たる経験を見つけて、説明や報告の穴に落とさないように、コトをスムーズに手際よく運んでいる。
佳作44 | 巻き紙の阿弥陀籤を引かされる | 愛知県 | 中川喜代子 |
佳作43 | 馬糞紙の話題で五分盛り上がり | 京都府 | 河村啓子 |
佳作42 | コウゾ君ミツマタ君を囲む会 | 大阪府 | 小林康浩 |
佳作41 | 紙のないトイレに非常ボタン押す | 島根県 | 石橋芳山 |
佳作40 | 紙ですから少し信用されてます | 大阪府 | 浅井ゆず |
佳作39 | 今晩のおかずは離婚届です | 石川県 | 岡本 聡 |
佳作38 | カレンダーに「ら」と書いてある母の未来 | 滋賀県 | 北村幸子 |
佳作37 | 紙の本から銀河へ行って来たところ | 北海道 | 四ツ屋いずみ |
佳作36 | 新聞紙しばる戦争縛るように | 青森県 | 吉見恵子 |
佳作35 | の途中では紙でしたということとか | 大阪府 | 雨森茂喜 |
佳作34 | 紙屑に一度はなってみるといい | 神奈川県 | 芝岡かんえもん |
佳作33 | できるだけ大きな紙で包む嘘 | 京都府 | 西山竹里 |
佳作32 | 立派な紙でした人生でした つづく | 青森県 | 田中 薫 |
佳作31 | わかります付箋セラピーやってるね | 東京都 | 藤田めぐみ |
佳作30 | 一線を越える紙ヒコーキのこころ | 青森県 | 笹田かなえ |
佳作29 | 遺言書見ました 笑っちゃいました | 青森県 | 髙瀨霜石 |
佳作28 | ほしいのは今日の苦さを包む紙 | 京都府 | 山本知佳子 |
佳作27 | 応用編は得意技です段ボール | 青森県 | にじの真美 |
佳作26 | 月からの招待状は明日まで | 秋田県 | 佐渡真紀子 |
佳作25 | たとう紙にしまう 静かにしてもらう | 秋田県 | 斎藤泰子 |
佳作24 | 十五夜に白紙委任をして眠る | 青森県 | 渡邊こあき |
佳作23 | 人影のように新聞飛んでゆく | 秋田県 | 佐渡真紀子 |
佳作22 | カステラの紙でしたけど まだなにか? | 北海道 | 宇佐美愼一 |
佳作21 | 副知事の顔から剥がすパラフィン紙 | 北海道 | 宇佐美愼一 |
佳作20 | 許されていいのは紙の重さまで | 東京都 | はるのあきこ |
佳作19 | エリーゼの夜なめらかな紙になる | 滋賀県 | 重森恒雄 |
佳作18 | リトマス紙青になったら踊るわよ | 北海道 | 四ツ屋いずみ |
佳作17 | 新聞紙一枚におさまってしまう | 滋賀県 | 安井茂樹 |
佳作16 | ぺらの街 ぺらの私の棲むところ | 京都府 | 蟹口和枝 |
佳作15 | 上手く描けたら夕陽はキミにあげる | 青森県 | 須藤しんのすけ |
佳作14 | 姉は今紅いセロフアン紙の向こう | 青森県 | 滋野さち |
佳作13 | 俺が紙芝居だ山場だぜめくれ | 宮崎県 | 雨月茄子春 |
佳作12 | 紙燃やすように捨てたよ会津弁 | 千葉県 | 尾崎良仁 |
佳作11 | 舌はもう原稿用紙モードです | 徳島県 | 徳長 怜 |
佳作10 | 破けちゃった金魚すくいのようですよ | 青森県 | 守田啓子 |
佳作09 | くしゃくしゃの紙を伸ばして泣いている | 兵庫県 | 中西南子 |
佳作08 | 白紙撤回 スズメいっせいに飛び立つ | 神奈川県 | 芝岡かんえもん |
佳作07 | わかりましたと表紙はいつも青い空 | 京都府 | 山本知佳子 |
佳作06 | いちにちはだいたい紙でできている | 滋賀県 | 安井茂樹 |
佳作05 | 妖精が剥がす空室有りの紙 | 愛知県 | 青砥和子 |
佳作04 | 紙だから説得力はありません。 | 大阪府 | 岸井ふさゑ |
佳作03 | 紙ねんど兵器もパンもひまわりも | 青森県 | 熊谷冬鼓 |
佳作02 | お利口にしているつもり紙コップ | 大阪府 | 髙杉 力 |
佳作01 | まさかとは思うが紙の裏も見る | 秋田県 | 佐々木智恵子 |
秀逸5 | オーロラを給紙トレイに入れました | 大阪府 | まつりぺきん |
秀逸4 | 追っかけて来ないよう折り鶴を置く | 青森県 | 佐藤雅秀 |
秀逸3 | 表紙になっても足のウラだとわかる | 愛媛県 | 村山浩吉 |
秀逸2 | (ゆうやけを)白紙にもどす遣唐使 | 東京都 | 暮田真名 |
秀逸1 | カステラの紙を今更はがせない | 秋田県 | 佐々木智恵子 |
特選 | 半券はもう伝説になるつもり | 大阪府 | 小原由佳 |
秀1と特選の作品でどちらを特選にするか最後まで迷った。選をしていて先に心に引っかかったのは秀1の作品だった。
カステラではないけどカステラの包装紙に包まれ何処かへ誰かへ差し出される。中味は何だったのだろう。饅頭? 賄賂? 開けたときのその人の表情は? ニンマリとするのか、あるいは笑い転げるのか。この作品にはこの世への哀しみ、怒り、笑い、がすべて含まれている。こんな場面はあちこちで繰り広げられ、「私ってナニ?」と思うことがしばしばである。
特選の半券は映画、演劇、美術館、遊園地等さまざまだ。昔映画のパンフレットを集めていたことがある。本棚一段になり捨ててしまったが、その後ひどく後悔している。半券をスクラップブックに収集している人もいるかもしれない。楽しかった時間が確かにあったという人生の歴史でもある。しかし、昨今、もうチケットは必要ではない。すべてスマホの中である。コンサートも美術館もスマホで申込み、差し出せば簡単に入場できる。美しく印刷された、あるいは特徴的な文字で書かれた半券は残らない。
この作品は半券が意思を持った主語として語られている。舞台から去る日が来ているが、半券は「つもり」と言う言葉から嘆いているのではなく、誇りをもって勇退するつもりだ。
半券のスクラップブックは確かに伝説になるだろう。その人だけの伝説物語ではあるが。
(ゆうやけ)を白紙にもどす遣唐使 もとても気になった作品だった。( )の中に入るのはゆうやけの他にどんなものがあるだろうと考えたが、遣唐使とゆうやけがぴったりだと思った。新たな一日に望みを託し遣唐使として異国の人々との対話を交わそうとしている。ある意味私たちは遣唐使なのかもしれない。
「紙」の作品群を読み、今回は選が割れるのではないだろうかと思った。
佳作44 | ねむるのがいつからむずかしい白紙 | 兵庫県 | 八上桐子 |
佳作43 | 老人が持ち歩いている紙の束 | 青森県 | 小野五郎 |
佳作42 | 再生紙どうしで旅をしませんか | 大阪府 | 笠嶋恵美子 |
佳作41 | 紙ですから少し信用されてます | 大阪府 | 浅井ゆず |
佳作40 | 新聞紙一枚におさまってしまう | 滋賀県 | 安井茂樹 |
佳作39 | 終わりそうな君と短いレシートと | 滋賀県 | 北村幸子 |
佳作38 | 紙が笑い私も今日は上機嫌 | 岩手県 | 熊谷岳朗 |
佳作37 | いちにちはだいたい紙でできている | 滋賀県 | 安井茂樹 |
佳作36 | 新聞を一枚かけてイブとアダム | 秋田県 | 田久保亜蘭 |
佳作35 | 曇のち収入印紙または棘 | 大阪府 | まつりぺきん |
佳作34 | びしゃびしゃにしてみる紙の約束 | 兵庫県 | 八上桐子 |
佳作33 | 飛行機を何度折っても人になる | 東京都 | 辻 述 |
佳作32 | 画紙いっぱい泣き声だけが描いてある | 奈良県 | ひとり静 |
佳作31 | 紙ねんど兵器もパンもひまわりも | 青森県 | 熊谷冬鼓 |
佳作30 | ずっとずっと折りたたまれたままの紙 | 奈良県 | ひとり静 |
佳作29 | 雲間から夕陽が出たぞ紙を漉け | 青森県 | 守田啓子 |
佳作28 | 蘇る 紙より白き 頰の妻 | 東京都 | 越田清四郎 |
佳作27 | 副知事の顔から剥がすパラフィン紙 | 北海道 | 宇佐美愼一 |
佳作26 | 紙魚だけは読み取ってくれたさ…たぶん | 青森県 | きさらぎ彼句吾 |
佳作25 | 懐紙につつむ百歳の股関節 | 北海道 | 澤野優美子 |
佳作24 | 俺が紙芝居だ山場だぜめくれ | 宮崎県 | 雨月茄子春 |
佳作23 | お利口にしているつもり紙コップ | 大阪府 | 髙杉 力 |
佳作22 | 銀紙を口に入れては祖父になる | 千葉県 | 岡本 朧 |
佳作21 | 新聞紙しばる戦争縛るように | 青森県 | 吉見恵子 |
佳作20 | 紙幣を吸う北島三郎の鼻 | 岡山県 | 藤井智史 |
佳作19 | フランシーヌになろうなろうとするティッシュ | 徳島県 | 徳長 怜 |
佳作18 | 子が巣立つ母に型紙だけ置いて | 青森県 | 葉 閑女 |
佳作17 | 紙風船鱒二の訳を諳んじる | 青森県 | 髙瀨霜石 |
佳作16 | もういいかほなさいならと紙吹雪 | 大阪府 | 峯島 妙 |
佳作15 | しゃっくりが続くシャッター街の張り紙 | 京都府 | 岩根彰子 |
佳作14 | 進次郎ラシクなるまでティッシュオフ | 青森県 | きさらぎ彼句吾 |
佳作13 | 人影のように新聞飛んでゆく | 秋田県 | 佐渡真紀子 |
佳作12 | コウゾ君ミツマタ君を囲む会 | 大阪府 | 小林康浩 |
佳作11 | カレンダーに「ら」と書いてある母の未来 | 滋賀県 | 北村幸子 |
佳作10 | 追っかけて来ないよう折り鶴を置く | 青森県 | 佐藤雅秀 |
佳作09 | 岸柳さんを紙風船で捕まえる | 青森県 | 笹田隆志 |
佳作08 | まさかとは思うが紙の裏も見る | 秋田県 | 佐々木智恵子 |
佳作07 | 馬糞紙の話題で五分盛り上がり | 京都府 | 河村啓子 |
佳作06 | 紙切りの師匠ではなくぬらりひょん | 東京都 | 飯島章友 |
佳作05 | 妖精が剥がす空室有りの紙 | 愛知県 | 青砥和子 |
佳作04 | くしゃくしゃの浅草紙があったかい | 青森県 | 笹田かなえ |
佳作03 | オーロラを給紙トレイに入れました | 大阪府 | まつりぺきん |
佳作02 | 紙っ切れやなんてぞんざいやなあ君 | 兵庫県 | 中西南子 |
佳作01 | たとう紙にしまう 静かにしてもらう | 秋田県 | 斎藤泰子 |
秀逸5 | 紙コップ本名書いてあり ビビる | 青森県 | 滋野さち |
秀逸4 | 紙ストロー萎える妖精吸ったまま | 東京都 | 小沢 史 |
秀逸3 | わかります付箋セラピーやってるね | 東京都 | 藤田めぐみ |
秀逸2 | バーキンに鯛焼き二個とラブレター | 大阪府 | 峯島 妙 |
秀逸1 | 紙燃やすように捨てたよ会津弁 | 千葉県 | 尾崎良仁 |
特選 | ペーパーレス? ペーもパー子も必要だ | 大阪府 | 小林康浩 |
【特選】 ペーパーレス? ペーもパー子も必要だ
年齢のせいで、耳が遠くなったり、いろいろなことの訳が分からなくなっているおじいちゃんと話しているみたいだと思って、にっこりしてしまった句だ。この句、例えば抒情だ批評だ意味性だと真面目に会議をしている部屋に、ちっちゃい手榴弾を投げ込んだような印象がある。それでも無造作に荒っぽく書かれたものではないと思う。よく研いだナイフで切った感じがある。
あの夫婦漫才のショッキングピンクの衣装や極楽鳥みたいなパー子の笑い声がよぎる。
【秀逸1】 紙燃やすように捨てたよ会津弁
心が「しん」とする作品である。色紙に書いて自分の部屋の壁に貼っておきたいくらいだ。「会津弁」だからこそ成立する句だと思う。
雪の重さや人との関わりや味わった蹉跌が伝わってくる。大阪弁ではこうはいかない。(大阪弁がわるいわけではなく)
【秀逸2】 バーキンに鯛焼き二個とラブレター
高級ブランドのバーキンのバッグ・鯛焼き・ラブレター。その落差だけを楽しめばいいのかもしれない。けれども私は、ここに「純情」を感じた。古風な「ラブレター」の力か。
【秀逸3】 わかります付箋セラピーやってるね
「あなたの選んだ付箋で深層心理が判ります」というところか。あるいは付箋に書いた内容を分析するのか。「付箋セラピー」は造語であろう。川柳ならではの掴み取り方だと思う。この鮮度を認めたい。
【秀逸4】 紙ストロー萎える妖精吸ったまま
某ハンバーガーチェーンの紙ストローを思い出す。飲んでいる途中でブヨブヨして、はなはだ具合がわるかった。「萎える」がいいと思う。妖精は、あの紙の管に閉じ込められたままなのだろう。その人が言いたかったひとことと一緒に。
【秀逸5】 紙コップ本名書いてあり ビビる
発想そのものは今までの川柳にもあったかもしれないが「ビビる」にナマの感情が出ている。たとえば、採尿室の小さな窓を開けて本名の書かれた紙コップを置くのが怖い。そしてちょっと情けない。きれいにまとめた句や建前で書かれた句にはない力がある。
「おかじょうき」十月号の「終着駅」でSinさんが書いておられる。一部抜粋させていただく。
【「読者」として選ぶ作品と、「選者」として選ぶ作品は違うという感覚である。違わなければならないとも思う。―略―その人が好きな川柳を発表することが「選」ではないと思うのだ。―略―その作品が「自分に書けるかどうか」「自分にその発想ができるかどうか」「自分にこの言葉がチョイスできるか」を考えてみるといいだろう。】
普段、選句をするときにぼんやりと感じていたことがここに書かれていた。だから自分が選んだ句に微かな違和感というか、性格のわからない猫を抱かせてもらうような感覚に捉われるのかもしれないと思った。
「おかじょうき」には新しさを感じるが、その一方で地縁ともいえる地道な活動を続けておられる。それを継続してゆく苦労はひとかたではないだろう。
でも、作品は残ってゆく。こんな時代にそう思えることは希望である。
佳作44 | 姉は今紅いセロフアン紙の向こう | 青森県 | 滋野さち |
佳作43 | 紙がいい燃えても風に吹かれても | 秋田県 | 赤石ゆう |
佳作42 | 病む母へ筆談会話続けます | 福岡県 | 城後朱美 |
佳作41 | ピアノにも家にもなった小さな紙 | 大阪府 | 浅井ゆず |
佳作40 | 月からの招待状は明日まで | 秋田県 | 佐渡真紀子 |
佳作39 | 紙風船耳をすませば母の吐息 | 佐賀県 | 桐野みづえ |
佳作38 | 紙飛行機ですか果たし状ですか | 大阪府 | 髙杉 力 |
佳作37 | 新聞紙しばる戦争縛るように | 青森県 | 吉見恵子 |
佳作36 | ヒコーキに折られた手紙けさ届く | 大阪府 | 宮井いずみ |
佳作35 | 爺ちゃんがばら撒く白紙委任状 | 大阪府 | 岸井ふさゑ |
佳作34 | 書き切れぬ思いが紙の上を這う | 石川県 | 宮田喜美子 |
佳作33 | ポスターの鼻の画鋲の奥に雪 | 東京都 | 小沢 史 |
佳作32 | 「生きるって何」ゆっくりひらく紙つぶて | 静岡県 | 米山明日歌 |
佳作31 | 破けちゃった金魚すくいのようですよ | 青森県 | 守田啓子 |
佳作30 | 白亜紀を見たくて恐竜折っている | 大阪府 | 笠嶋恵美子 |
佳作29 | トンネルの出口へ誘う紙おむつ | 埼玉県 | 山田こいし |
佳作28 | 人影のように新聞飛んでゆく | 秋田県 | 佐渡真紀子 |
佳作27 | たとう紙にしまう 静かにしてもらう | 秋田県 | 斎藤泰子 |
佳作26 | 壁紙と深夜三時の物思い | 埼玉県 | 野邊富優葉 |
佳作25 | しゃっくりが続くシャッター街の張り紙 | 京都府 | 岩根彰子 |
佳作24 | 今晩のおかずは離婚届です | 石川県 | 岡本 聡 |
佳作23 | 再生紙どうしで旅をしませんか | 大阪府 | 笠嶋恵美子 |
佳作22 | トイレットペーパーくるくる生きて来たリズム | 岩手県 | 熊谷岳朗 |
佳作21 | 泣いてみせる紙ストローの溶けるまで | 兵庫県 | 筏井加代子 |
佳作20 | 俺が紙芝居だ山場だぜめくれ | 宮崎県 | 雨月茄子春 |
佳作19 | お品書き残してあなただけ消えた | 東京都 | 藤田めぐみ |
佳作18 | ペーパーレス僕も一緒に消えました | 京都府 | 和田洋子 |
佳作17 | お利口にしているつもり紙コップ | 大阪府 | 髙杉 力 |
佳作16 | 古紙しばる私もろとも捨ててくる | 青森県 | 熊谷冬鼓 |
佳作15 | ほしいのは今日の苦さを包む紙 | 京都府 | 山本知佳子 |
佳作14 | 純白の過去は語らぬ再生紙 | 静岡県 | 柳谷益弘 |
佳作13 | 紙おむつにナンパされちゃった | 北海道 | 浪越靖政 |
佳作12 | 幸せになるはずだった紙コップ | 愛知県 | 安井紀代子 |
佳作11 | 紙魚の跡追って卑弥呼に会いに行く | 埼玉県 | 山田こいし |
佳作10 | 猫背の紙切れの渡った交差点 | 福井県 | みつ木もも花 |
佳作09 | 障子から朝が素足で入り込む | 秋田県 | 佐藤春子 |
佳作08 | 愛したり殺してみたり紙一重 | 大阪府 | 山里はるえ |
佳作07 | 美しい紙になあれと水をやる | 秋田県 | 赤石ゆう |
佳作06 | レシートが1枚あの人はいない | 青森県 | まみどり |
佳作05 | 遺言書見ました 笑っちゃいました | 青森県 | 髙瀨霜石 |
佳作04 | の途中では紙でしたということとか | 大阪府 | 雨森茂喜 |
佳作03 | やさしさを紙で包んで重くする | 兵庫県 | 妻木寿美代 |
佳作02 | 画仙紙も筆も淫らになる真昼 | 青森県 | 葉 閑女 |
佳作01 | 画紙いっぱい泣き声だけが描いてある | 奈良県 | ひとり静 |
秀逸5 | オーロラを給紙トレイに入れました | 大阪府 | まつりぺきん |
秀逸4 | 飛行機を何度折っても人になる | 東京都 | 辻 述 |
秀逸3 | ずっとずっと折りたたまれたままの紙 | 奈良県 | ひとり静 |
秀逸2 | くしゃくしゃの紙を伸ばして泣いている | 兵庫県 | 中西南子 |
秀逸1 | 追っかけて来ないよう折り鶴を置く | 青森県 | 佐藤雅秀 |
特選 | 紙屑に一度はなってみるといい | 神奈川県 | 芝岡かんえもん |
第29回杉野十佐一賞に多くの方々からご応募をいただきました。誠にありがとうございます。
選者をお引き受けくださった方々、お忙しい中選考に時間を割いていただき深く感謝申し上げます。
応募数は、前々回が322句、前回が333句、そして今回は274句となりました。
前回からの落ち込みが気になりますが、主催者としては応募をありがたく思っております。
今回の題「紙」は、別の機会に何度も作句されたことがあって作りづらかったことと思います。
同じ題でこれまでと違った発想の句を作るということは自分の壁を打ち破るということです。果たして壁を破ることができましたでしょうか。
秀逸3 「折りたたまれた紙」を作者本人のこととして読みました。この紙は、これから開かれることがあるのでしょうか。開かれるとしたら、いつ、どんなふうに開かれるのでしょうか。
秀逸2 作者が泣いている原因は「くしゃくしゃの紙」です。なぜ「くしゃくしゃの紙」を伸ばしながら泣いているのか書かれていませんが、特別のことが書かれていたのかもしれません。くしゃくしゃにしたのは作者でしょうか。それとも違う誰かでしょうか。答は読者の胸の中にある、ですね。
秀逸1 「折り鶴」には、これまで「長寿の象徴」や「願いを成就させる物」あるいは「平和のシンボル」というイメージがありましたが、その「折り鶴」とは違う発想のおもしろさがあります。
特選 紙屑に一度はなってみるといい
読者に対する人生のアドバイスでしょうか。作者には「紙屑」になった経験が何度もあるようです。「紙屑」を広辞苑で調べると「不用となった紙片。使って捨てた紙。」とあります。一度捨てられて、そこから這い上がって来い。そうしてみんなと肩を並べよう、と言っているような気がします。
【北海道】 | 宇佐美愼一・落合魯忠・河野潤々・澤野優美子・浪越靖政・四ツ屋いずみ |
【青森県】 | 石澤はる子・井上健蔵・うつわ・戎踊兵・小野五郎・きさらぎ彼句吾・工藤麦の芽・熊谷冬鼓・嵯峨寛之・坂本清乃・笹田かなえ・笹田隆志・佐藤雅秀・沢田百合子・滋野さち・須藤しんのすけ・高木まあこ・髙瀨霜石・田中 薫・旅男・夏草ふぶき・にじの真美・福士かれん・藤田智恵子・船橋敏昭・まみどり・村上あつこ・守田啓子・葉 閑女・吉見恵子・渡邊こあき |
【岩手県】 | 熊谷岳朗 |
【宮城県】 | 勝又明城・木立時雨 |
【秋田県】 | 赤石ゆう・一帆・斎藤泰子・佐々木智恵子・佐藤春子・佐渡真紀子・妹尾 凛・田久保亜蘭 |
【埼玉県】 | 佐野 純・鈴木 雀・野邊富優葉・山田こいし |
【千葉県】 | 岡本 朧・尾崎良仁・日下部敦世 |
【東京都】 | あさじ・飯島章友・上原 稔・小沢 史・暮田真名・越田清四郎・辻 述・はるのあきこ・藤田めぐみ |
【神奈川県】 | 相原あやめ・芝岡かんえもん・下村 修 |
【新潟県】 | 谷沢けい子 |
【富山県】 | 金瀬達雄 |
【石川県】 | 岡本 聡・宮田喜美子 |
【福井県】 | みつ木もも花 |
【長野県】 | 西沢葉火 |
【岐阜県】 | 早川柚香 |
【静岡県】 | 中前棋人・柳谷益弘・米山明日歌 |
【愛知県】 | 青砥和子・安藤なみ・河村けい瑚・黒川利一・瀧村小奈生・中川喜代子・猫田千恵子・松長一歩・安井紀代子 |
【三重県】 | 奥田悦生・西脇祥貴・山口亜都子 |
【滋賀県】 | 石寺北次郎・北村幸子・重森恒雄・中島順子・安井茂樹 |
【京都府】 | 岩根彰子・蟹口和枝・河村啓子・木戸利枝・西山竹里・山本知佳子・和田洋子 |
【大阪府】 | 浅井ゆず・雨森茂喜・小川佳恵・小原由佳・笠嶋恵美子・岸井ふさゑ・小林康浩・髙杉 力・兵頭全郎・まつりぺきん・峯島 妙・宮井いずみ・山里はるえ |
【兵庫県】 | 筏井加代子・大山ありる・妻木寿美代・中西南子・八上桐子 |
【奈良県】 | ひとり静・柳本惠子 |
【鳥取県】 | 斉尾くにこ |
【島根県】 | 石橋芳山 |
【岡山県】 | 藤井智史 |
【徳島県】 | 徳長 怜 |
【愛媛県】 | 大内せつ子・郷田みや・村山浩吉 |
【高知県】 | 小野善江・森乃鈴 |
【福岡県】 | 城後朱美・もりともみち |
【佐賀県】 | 桐野みづえ・嵯峨山登・真島久美子 |
【熊本県】 | いわさき楊子 |
【宮崎県】 | 雨月茄子春・てつろう |